20世紀少年 : 堤幸彦監督が超大作「20世紀少年」に挑んだ理由とは?(2)

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堤幸彦監督インタビュー

堤監督は原作ファンを裏切ってはいけないという思いから原作原理主義を貫いたという堤監督は原作ファンを裏切ってはいけないという思いから原作原理主義を貫いたという

■世紀のビッグ・プロジェクトへの挑戦

——この大作を手掛けるに当たって、まず準備したことは?

「それは原作を読み込むことですよね。読んで読んで10回くらい読み通しました。そして先ほど話した3つのポイントが浮かんできたわけですが、その3つを自分なりに解釈してしまうと非常に主観的な映画になってしまうので、世界中に何千万人もいる原作ファンを裏切ってはいけないという思いから、ここはひとつ原作原理主義を貫いて、『20世紀少年』を完全コピーという枠でとらえようと思ったわけです」

——原作原理主義ということで、原作漫画を台本に張ってカット割りを考えたそうですが、逆に演出しにくいということはありませんでしたか?

演出に困ったときは原作漫画に戻ったという堤監督演出に困ったときは
原作漫画に戻ったという堤監督

「まったくないですね。最も映画的な漫画なので、漫画的な映画にすればいいわけで、とてもやりやすかったですね。もちろんすべて漫画通りのカット割りというわけではなくて、実際は半分くらいなんです。構成とかストーリーが漫画通りではないわけですから。でも、その使わせてもらった半分は、困ったときの判断基準になるんです。しかもそれが自分の視点ではないということも重要なんです。だからといって、人の服を借りて着ているような感覚ではなかったです。それでも、映画オリジナルの存在感みたいなものはなくならないと思ったし、完全コピーといえども、ヒッチコックの名作をそのままコピーするのではなく、漫画という異なるフォーマットから映画に移し替えるわけですから」

——第1回目のインタビューでお話を聞いた飯沼プロデューサーからは、第1に60年代、70年代の生の熱を知っているということ、第2にサスペンスが撮れるということ、そして、第3に監督がロックンロールの何たるかを知っているということで、監督に指名させていただいたと聞きましたが、堤監督自身はサスペンス演出について何か一家言あるのですか?

「他にもそういう方っていっぱいいると思いますけど、過去の日テレへの貢献度が高いので、選ばれたのかなっていう気もします(笑)。サスペンス演出って別に得意っていうわけでもないですし、僕自身は得意なジャンルも、苦手なジャンルもないですからね。たまたま『ケイゾク』とかサスペンス色の強いものはやったことがあるけども、特に昔からサスペンスが好きで、僕の原点は『死刑台のエレベーター』ですとか言えればカッコいいんですけど、違っていて、植木等だったりするし(笑)」

子供時代のちょっとしたことからサスペンスが生まれていく子供時代のちょっとしたことから
サスペンスが生まれていく

——堤監督というと、映像を使っての“遊び”が有名ですが、今回はカッチリとしたシナリオがあるので、遊ぶ余裕が無かったのではないですか?

「全編サスペンスということとクールなタッチなので観客が疲れると思って、かなりのギャグを撮ってしまったんですけど、全部切りました。結局編集してみると、浦沢さんの原作通りのクールなタッチで推し進めた方が、余計なギャグが入ったバージョンよりスピード感があって時間が短く感じたんです。不思議でしたね。だからDVDでは全部切ってしまったギャグを集めて、『ギャグの墓場』というコンテンツを作りたいんですけどね(笑)」

——日本一多忙な映画監督といっても過言ではない堤監督ですが、以前、「自虐の詩」で話を聞いた際には、プロジェクトをいくつも抱えていても、分業システムがあるから大丈夫と聞きました。その分業システムというのは具体的にどういったものなのでしょうか?

「きわめて単純なことなんです。まず、今東映で『まぼろしの邪馬台国』を作っているチーム(編集、音、プロデューサー)がいますよね。一方、東宝には『20世紀少年』製作チームがいる。それぞれの連絡係がいるわけですが、彼らがスケジュール調整をして進めるということです。だから極端な話、ダビングを同時に出来るような調整ですね。2班3班といったような形で撮影も同時に出来るようにしています。ただ、キャメラマンと監督の2人の負担は大きくなりますよね。今回の場合だと、2月くらいが一番キツかったですね。昼間に東映の大泉スタジオで『邪馬台国』をやって、そのまま観光バスに乗って移動しながら眠り、埼玉の奥の方で『20世紀少年』を撮って、翌日朝からは再び大泉で『邪馬台国』の撮影っていうのを何日間か続けましたね」

——想像を絶する忙しさですね。

「仕方ないですよね。でも80年代の方がずっと忙しかったんですよ。だから今の忙しさを苦しいと感じたことはありませんね。歳とったから辛いということはあるけど、昔はもっと滅茶苦茶でしたからね。編集も3ついっぺんにやったりしてたんで」

——いくつものプロジェクトを、頭の中でどうやって整理するのですか?

「しません。だって昼に鮨を食って、夜に中華を食えるでしょ。それと同じですよ(笑)」

物語は2章3章へと続く。果たして、ケンヂたちはこのマークを取り戻せるのか!?物語は2章3章へと続く。果たして、
ケンヂたちはこのマークを取り戻せるのか!?

——今の堤監督の状態は、昼食に、鮨、カレー、中華のすべてを食べているような印象も受けますが?

「それでも全然いいですよ。和洋中のバイキングなんて一番嬉しいじゃないですか(笑)」

——完成した第1章をご覧になった浦沢さんが3度泣いたとおっしゃってましたが、率直なお気持ちは?

「それはありがたいですよねえ。自分ではもっと直したいとか、見る度に色々思いつくんで、感情移入する余裕はないんですけど、そうやって作ったご本人が感激してもらえるっていうのは嬉しい以外の何物でもないですよ」

——これから第2章、第3章と続きますが、どのような映画として完成させたいですか?

「よく話していることですが、第1章で驚かせて、第2章でさらに混乱させて、第3章でなるほどそう来たかと腑に落ちる。そういう3部作にしたいと思ってます」

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ABOUT THE MOVIE

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  • 20世紀少年
  • 浦沢直樹の同名人気コミックを全3部作で映画化する第1部。監督は「トリック」「明日の記憶」の堤幸彦。世は20世紀末、小学生の頃に遊びで書いた“よげんの書”の内容通りに、世界滅亡の危機が現実に起こりつつあることを知ったケンヂは、かつての仲間を集め世界を救うために立ち上がる。しかし、事件の裏には“ともだち”と呼ばれる謎の存在が……。唐沢寿明、豊川悦司、常盤貴子ほか、主演クラスの俳優が多数出演する豪華キャストも話題。
  • 監督:
    堤幸彦
    脚本:
    福田靖、長崎尚志、浦沢直樹、渡辺雄介
    原作:
    浦沢直樹(「20世紀少年」小学館ビッグスピリッツコミックス刊)
    撮影:
    唐沢悟
    音楽:
    白井良明
    美術:
    相馬直樹
    企画:
    長崎尚志
    プロデューサー:
    飯沼伸之、甘木モリオ、市山竜次
    主題歌:
    T.REX「20th Century Boy」
    出演:
    唐沢寿明、豊川悦司、常盤貴子、香川照之、石塚英彦、宇梶剛士、宮迫博之、生瀬勝久、小日向文世、佐々木蔵之介、藤井隆、山田花子、ARATA、片瀬那奈、池脇千鶴、鈴木崇大、三浦寿和、中田敦彦、藤森慎吾、藤井フミヤ、及川光博、竹中直人、森山未來、津田寛治、徳井優、石橋保、布川敏和、入江雅人、竹内都子、洞口依子、遠藤憲一、光石研、佐野史郎、ベンガル、石井トミコ、研ナオコ、竜雷太、吉行和子、石橋蓮司、中村嘉葎雄、黒木瞳
    製作国:
    2008年日本映画
    上映時間:
    2時間22分
    配給:
    東宝
  • 8月30日より日劇2ほかにてロードショー
  • オフィシャルサイト

(C)1999,2006 浦沢直樹 スタジオナッツ/小学館
(C)2008 映画「20世紀少年」製作委員会

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