【映画プロデューサー・北島直明を知ってるか!? 第6回】コロナ禍で気づかされた映画製作の在り方

2020年12月11日 10:00


映画製作への熱い思いを語った北島直明氏
映画製作への熱い思いを語った北島直明氏

キングダム」「AI崩壊」「ルパン三世 THE FIRST」など、精力的に映画をプロデュースし続ける北島直明氏に密着する不定期連載の第6回。今回は、福田雄一監督最新作「新解釈・三國志」の企画がいかにして動いていったのか、そして新型コロナウイルスの脅威がいまだ続くなかで今後の映画製作の在り方についても話を聞いた。

新解釈・三國志」は、“コメディの奇才”と称されて久しい福田監督が、日本でも広く親しまれている中国の「三國志」に独自の新解釈を加えて描く歴史エンタテインメント。大泉洋を初めて主演に迎えたほか、ムロツヨシ賀来賢人橋本環奈山田孝之佐藤二朗小栗旬といった福田組おなじみの顔ぶれから、岩田剛典渡辺直美山本美月岡田健史まで個性あふれる面々が結集した。

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北島氏が福田監督とタッグを組むのは、「斉木楠雄のΨ難」「50回目のファーストキス」に続き3度目。「斉木楠雄のΨ難」の撮影現場で、今作の構想を聞かされたという。

「今でも覚えていますよ。吉沢亮くんがボウリング玉の前でひたすら奇妙な動きをする芝居シーンの合間でしたね。自転車置き場前のモニターベースで、福田監督が『北島さん、次は“新解釈・三國志”っていうのをやりたいんですけど』って話してくださったんです。主演は大泉さんに決めているというし、企画の構想がめちゃめちゃ面白かったんです。だから、一緒に組んでいる松橋真三プロデューサーとも相談をして、企画のマテリアルを聞いてから2週間くらいで企画を通し予算を集めました。これまでで最速で動きました」

プロデューサーとしてデビュー当時からフットワークが異様なほどに軽かった北島氏だが、当時から理念にはブレがない。「自分が作る時も、お客として観る時も、映画の企画って30文字くらいの説明を聞いて面白いか否かって大事なポイントだと思うんです。三國志って売れているとかいうレベルではなく、レジェンド級。更に監督には“新解釈”のイメージが出来ていたんです。『劉備が黄巾党の前で朗々と自分の儀を語っておきながら、“行け張飛!”って言い放つの、面白くないですか?』と聞かされて。ヒーローのはずの劉備が文句しか言わないって超面白いじゃないですか。ボヤき続ける劉備、それが決め手でしたね(笑)」

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福田監督という強烈な個性を立てながら、プロデューサーとしての客観性を見失うことはなく、より良い脚本にするべく協力を惜しまなかったようだ。

「三國志って言ってみれば歴史書なわけじゃないですか。それを丁寧に描いていたら何時間あったって足りません。予算も決まっているし、2時間でやり切らないといけない。監督が描きたい有名なシーンと有名なシーンを、どう繋いでいくかという苦労はありましたね。それぞれのシーンで、パンチの効いた実力のある役者さんたちが出てくるわけですから。映画のストーリーの縦軸としての繋がりみたいなものに関しては、編集段階になっても監督は悩まれていましたね。そこに対して客観的な見方をしていくのが我々の仕事だと思うんです」

「脚本の笑いのパートに関しては、福田さんのジャッジ。僕らは、シーンとシーンの繋ぎの部分、新解釈を講義する歴史学者・蘇我宗光として語り部を務めた西田敏行さんの言葉回しを考えていきました。登場人物も多いですから、何かに引っかかって次のシーンが受け入れられないって、もったいないじゃないですか。この作品はストレスを感じて観る作品じゃないですから。福田作品って、とにかく笑ってもらいたい、楽しんでもらいたいって一心なんですよ」

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そのうえで、製作における課題も認識しているといい、「市場規模をもう少し広げて見ていかないといけないと思うんです」と明かす。「僕ら日本人の映画製作者は、日本語圏においての仕事が基本です。世界の言語市場の中でいえば、日本語は2%ほどでしかないわけだから、当然ながらバジェットの限界も出てきます。ハリウッド映画や中国映画とは、言語規模が全然違います。30%くらいを占める言語圏で勝負している人たちとは、市場規模が違うわけだから、制作費や製作規模で勝てないのは当然です。ではどうすべきなのか。自分の見ている市場規模の視野角を外に広げていくしかありません。そのやり方については、今後の課題ですよね」と眉間に皺を寄せる。

日本の映画人たちが世界市場で戦うということが、一体どういうことなのかを日々考えていくなかで、プラットフォームにこだわらない作品づくりに目を向けている。コロナ禍で来年以降の映像業界がどのような世界になっていくのか想像し難いだけに、尚更といえる。

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「配信の是非って見解は色々ありますが、僕は柔軟でいたいと思っているんです。作品テーマによっては、映画ではなく配信を選ぶ、これからはそういう考え方だってあります。だって、10年後のことなんて分からないですから。あまりコンテンツという言い方は好きではないのですが、強いコンテンツがあれば映画、テレビ、配信、VRなど、どこでだって勝負できるはずなんです。そういう強いコンテンツを作りたいと思っているんです。そのための第一歩として、プラットフォームを変えて、連続ドラマをプロデュースしてみたいと考えています」

ハリウッドのメジャースタジオが長年にわたり“メジャー”たりえた所以とでもいおうか、ストックコンテンツにも目を向ける。

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「Disney+って最強ですよね。ここでしか見られないものがある強みですよね。いかにして未来にコンテンツを残し、そのコンテンツにファンが付き、そのファンが望むものを次に作り出していけるか。そういう善のスパイラルを考えるべきですよね。他メジャーでも『ハリー・ポッター』から『ファンタスティック・ビースト』、『ジュラシック・パーク』から『ジュラシック・ワールド』のように、作品が時代に応じてカスタマイズされて常に生き続ける感じ。ハリポタやジュラシックを見ていた世代が大人になったとき、自分の子どもくらいの世代の子たちがカスタマイズされたものを観るという。そういう楽しみ方って面白いですよね」

「言うなれば、『3年B組金八先生』。金八先生という強烈なキャラクターはそのままに、時代に合わせて生徒たちの抱えている問題が変わっていくという。日本人は本来得意なはずなんですよ。ウルトラマン、仮面ライダー、戦隊ものなど……。これからは、長いスパンでコンテンツを育てるということも考えながら作品をつくっていきたいですね」

感染予防対策など万全を期して現在も新たな作品に向き合っている北島氏が、コロナ禍での映画製作の現場をいかにして切り回していったのか、同時に推し進めることになった働き方改革についてなどは、また次回詳しく紹介します。

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