アンチソーシャル・ネットワーク 現実と妄想が交錯する世界 : 映画評論・批評

2024年4月23日更新

2024年4月5日より配信

2ちゃんねる由来のSNSがトランプ大統領を生んだ? アメリカの近代史を理解するための特別な一本

本作は、アメリカの近代史を理解するにあたり、極めて重要な作品です。日本のBBS「2ちゃんねる」をルーツにもつ「4chan(フォーチャン)」というプラットフォームが、ここ20年ほどのアメリカの文化と政治に多大な影響を与えた様子が描かれています。「カエルのぺぺ」をフィーチャーしたドキュメンタリー「フィールズ・グッド・マン」(2021)という作品がありましたが、ぺぺの画像が拡散していたのも、この「4chan」なのです。

2003年に「moot(ムート)」と名乗る若者が、日本文化やアニメについて語り合うために立ち上げた4chanは、アメリカのオタクたちに熱狂的に支持されます。この辺は、かつての2ちゃんねるの勃興と社会問題になった時代を経験している日本人には何の違和感もないでしょう。何故、アメリカで2ちゃんねる的なBBSが誕生するまでこれほど時間がかかったのかという疑問は覚えますが。

「アンチソーシャル・ネットワーク 現実と妄想が交錯する世界」
「アンチソーシャル・ネットワーク 現実と妄想が交錯する世界」

ガイ・フォークス・マスクをかぶった「アノニマス」たちが「ウォール街を占拠せよ」と世界中でデモを行ったのも、4chan由来だったことがこの映画で分かります。匿名の掲示板に集う若者たちが、揃いのマスクをかぶって、身バレすることなく暴れまわった案件です。ネット民独特の思考と行動様式が透けて見えます。

そして、トランプの当選にも4chanは一役も二役も買っています。後に、トランプ政権の首席補佐官も務めたスティーブ・バノンがこのプラットフォームに目をつけ「居場所のない白人男性たち(=オタク)」をトランプ支持者に仕立て上げたという話はめちゃめちゃ腹落ちするストーリーです。

「Qアノン」にまつわる陰謀説の誕生についても、この映画で明らかにされます。さらには、2021年1月6日の、連邦議会議事堂襲撃事件の顛末は、ちょっと笑えるフッテージとともに紹介されます。

この映画を見たおかげで、今年(2024年)の11月に投開票が行われるアメリカの大統領選が俄然楽しみになりました。選挙の結果ももちろんですが、選挙のプロセスにも注目ですね。今回、トランプ陣営はSNSをどんな風に活用するのか。

それにしても、NETFLIXには、とても重要なドキュメンタリーが無造作に置いてあることがありますね。これを発見するのも、映画ファンの楽しみであり、喜びだと感じました。

駒井尚文

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