劇場公開日 2011年12月17日

フレンズ もののけ島のナキ : インタビュー

2011年12月17日更新
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晴れて製作が正式に決まり、まずは2人で10~15分の絵コンテを交互に描く絵コンテ作業を13稿ほど繰り返す。フルCGアニメ、しかも3Dとなるといかなる製作工程なのか想像しにくいが、イメージ的にはCGで自由にコントロールできる人形がコンピューター内にいて、時系列に沿って“演技”をつけ、カットごとに映像のクオリティを高めていくのだという。八木監督にとっては初監督となるだけに、相当なプレッシャーがあったのではないか。

八木「まずはカットがそろうかどうかでしたね。ハイクオリティでないと意味がないので、全部で800カット近くありますがそれをこのくらいの人数で3年ちょっとで90分にする。できるかな? どうかな? もうちょっとこうしたいけど、それをやっていると次のカットに入れない。そういうせめぎ合いでした」

一方の山崎監督は、「ALWAYS 続・三丁目の夕日」「BALLAD 名もなき恋のうた」など実写作品のメガホンが相次ぐ。実務的な部分では八木監督に全幅の信頼を置いていたのだろう。

山崎「全然大丈夫だろうと思っていたし、スケジュールのことを心配したくなかったから(一同大爆笑)。間に合うか間に合わないかと思いながらジャッジしていくのは、一番消耗するんですよ。『鬼武者3』は約5分が1年でも間に合わなくて痛い目に遭った。“年速5分”のチームに、1年で30分作れというのは無茶だけれど、八木に任せておけば大丈夫だという前提で」

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山崎監督が「CG映画は妥協の塊」と言うように、微に入り細に入りこだわっていたら切りがない。そんな予算的にも時間的にも限られた中で重責を担うのは、さぞストレスがたまり挫折しそうになるのではと思ったが、八木監督は意外にも「全然。楽しくやらせてもらった」と述懐する。

八木「苦しいことも、楽しいんです。大まかなラフを作っている段階から、自分の要望を伝えて良くなっていき、どんどん自分の見たいものができ上がってくる感覚。最初の観客みたいで、辞められなくなる楽しさです。僕が喜べば(スタッフの)達成感、満足感にもつながっていくと勝手に思っています。またやらせてもらえるなら、まだまだやりますよ」

企画開発から実に6年近くを費やしての完成。奥行きのある世界観が広がり、もののけ島を縦横無尽に駆け回るナキやグンジョー、愛くるしいコタケ、コメディリリーフ的な役割のゴーヤンなどのキャラクターが魅力的で、虹彩の動きまで計算されたようなち密な映像に引き寄せられる。八木監督も出来ばえには満足げだが、公開が近づくにつれて別の思いが膨らんできている。

八木「特にこの2、3年はこのプロジェクトだけをやり続けてきた。マラソンを走り続けてきて、映像ができた段階で1回ゴールと思ったんですよ。ホッとしたけれど、いまだに公開前。あれ、何位だったの?みたいな(笑)」
山崎「まあ、成績表みたいなものだからねえ」
八木「この間、CG業界の人たちと会う機会があったんですけれど、『CG映画業界の未来がかかっている』そうです」
山崎「情熱だけで作ったわけではなく、今までのノウハウ、あらゆる手管を使って作ったから、これがダメなら次はないなという感じも少しはありますね」
八木「当たらないことを前提で話さないでほしいんだけど。しかも、山崎からは『僕の今までの監督作品は、興収10億以下はないって言われているんですよ』

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自虐的なやり取りも自信の表れだろう。しかも、スティーヴン・スピルバーグ監督が初めて3DCGアニメに挑んだ「タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密」と直接対決となる。

八木「アリと象みたいな感じですけれど、お客さんにとってはひとつの作品。どの国でも受け入れてもらえるように無国籍風な映画にしていますが、根底には日本らしいオーバーアクトな感じとシリアスな部分を同居させています。コタケも含め、“かわいい先進国”である日本のキャラを世界中に見てもらいたい」
山崎「息の長いものにはなると思うんです。DVDなどになって愛され、テレビ放送で再発見されるだろうし、白組が最初に作った3DCGアニメという旗印としては恥ずかしくないものができた。日本人だったらナキを見て、国産作品を育てましょう。決して後悔はさせません」

相手にとって不足なしの心意気やあっぱれ。日本が世界に誇る3DCGアニメの看板に偽りなしである。

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