マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙

劇場公開日:

マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙

解説

イギリス史上初の女性首相で、その強硬な性格と政治方針から「鉄の女」と呼ばれたマーガレット・サッチャーの半生をメリル・ストリープ主演で描いたドラマ。父の影響で政治家を志すようになったマーガレットは1975年、50歳で保守党党首に選出され、79年にはイギリス初の女性首相となった。国を変えるため男社内の中で奮闘するマーガレットは「鉄の女」と呼ばれるようになるが、そんな彼女にも妻や母としての顔があり、知られざる孤独と苦悩があった。マーガレットを支えた夫デニス役にジム・ブロードベント。監督は「マンマ・ミーア!」のフィリダ・ロイド。第84回アカデミー賞ではストリープが主演女優賞を受賞。ストリープは史上最多17回目のノミネートにして、「クレイマー、クレイマー」(79)、「ソフィーの選択」(82)に続く3つ目のオスカー像を手にした。

2011年製作/105分/G/イギリス
原題:The Iron Lady
配給:ギャガ
劇場公開日:2012年3月16日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第84回 アカデミー賞(2012年)

受賞

主演女優賞 メリル・ストリープ
メイクアップ賞  
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(C)2011 Pathe Productions Limited , Channel Four Television Corporation and The British Film Institute.

映画レビュー

2.5ストリープさんの演技とメイクがすごいとしか印象が残らない。

2024年5月29日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

単純

知的

寝られる

おばあさんになった時の後ろ姿。そんなところまで演技できるんだ。
おばあさんになってからの、あの、顎と首がつながっている皺。どうやって作ったのだろう。しかも、口をモグモグしているときや話しているときも当然のように口の動きに合わせて動いている!!!
目も、白濁していて、うつろに視線が動く。

首相時代の凛とした姿もすごいけれど、サッチャーさんの動きとかまでは覚えていないから、そっくりなんだと言われればそうなんだと思うしかない。

デニス氏のお茶目さ。若い頃も、壮年になってからも、好感が持てるのだが、ブロードベント氏が演じるほどのものかとは思う。尤も、ストリープさんに並べるのはこのクラスの俳優でないと影が薄くなってしまうのかもしれないとも思う。

映画は、二兎を追う者は一兎をも得ず。
 本当に、「何が描きたかったのか」という感想が出てきてしまう。
 軽く、あの時代に起きたことをおさらいするには良いけれど。でも、サッチャー政権側からしか描いていないから、偏った見方を身に着けてしまうようでお薦めできない。
 物足りないし、この映画をそのまま受け取ってよいのかと懐疑的になってしまう。

過去を振り返る形で映画が進む。
 「認知症になって」という設定なのだが、亡き夫の幻覚があるから、認知症?しっくりこない。単に、老年になって、しかも断捨離を周りから迫られて、過去を思い出しているようにしか見えない。
 どうしてこういう設定?演出?
 この老年の部分を削って、政策の攻防でも見せてくれたら、手ごたえがある映画になったのに。もしくはデニス氏との会話で過去を振り返ってくれたら、違う側面が出てきたかもしれない。

家族との関係を見直したかったのか?
過去のそれぞれの決断や行いを見直したかったのか?
 だが、それに対するマーガレットさん・デニス氏の思いは語られない。デニス氏の「過去を思い出せば、つらかったことも思い出す」「(ビデオを)巻き戻したって過去は巻き戻せない」とか、マーガレットさんの「デニス、あなたは幸せだった?」とかの言葉は散見されるけれど、彼らがどう感じていたかは語られない。
 当然、政治家としての行動に関しても駆け足で見せる。

サッチャー首相一人称で話が進む。サッチャー首相以外の他者の視点が、ドラマとして絡んでこない。動画を見ているように、それぞれ言いたいことを言って消えていく。コミュニケーションが生じていない。特に、私がイギリスの俳優に慣れていないからか、政治家たちは誰が誰やら、モブたちがサッチャー首相に好きかって言っているように見えてしまう。
 フォークランド紛争の決断は、人命がかかったあれだけの責任を、”首相”として一人で負わなければならないのかと息をのんだ。リーダーとしての資質とは胆力も含まれているのだなと思った。
 けれど、”開戦”なんて出来事を、今の時代に、首相一人で決められるのか?イギリスと日本では政治の制度が違い、イギリスならできるのか?ならば、議会なんていらない。今のロシア・プーチン大統領と同じ。
 他の施策も同様の描き方。サッチャー首相の決断・行動ばかりで、同じ党員やほかの政党議員の動き、民衆・マスコミ、すべてが背景。
 サッチャー首相の”孤独”を現わしているのか?サッチャー首相の心に響くような人はいなかったと。「一人で生きてきた」デニス氏の言う通りに。それを描きたかったのか?でも、そうしたのはサッチャー首相自身。幻覚として現れる夫の言葉もちゃんと聴かない。「行かないで」とはいうのだが。
 ストリープさんの演技はすごいが、そこに”孤独”は感じさせない。息子が南アフリカから帰ってこなくてすねるシーンはあるが、そこでも”孤独”はみじんもない。傍から見れば孤独極まるが、サッチャー首相自身は自分の”孤独”に気が付いていない設定なのか。気持ちより考えを尊ぶ人だもの。

サッチャー政権。11年も続いたんだとこの映画で初めて認識する。
 炭鉱閉鎖。”国”としては必要なことなのだろうけれど、『パレードへようこそ』にはまっている身には…。
 フォークランド紛争については『MASTERキートン』で読んだくらいしか知らないけれど…。
 激しいデモの様子が当時の映像で流される。馬にひき殺される人も出るほど、凄まじい。ハンガーストライキで何人も犠牲になり、かなりの反対派がいたことが示される。
 そんな情勢ならすぐに転覆しそうなものだけれど、サッチャー政権は11年も続いている。この映画を観る限り、この政権がこんなに続いた理由は見えてこない。パワハラが過ぎて、党首の座から追われる様は描くが、サッチャー首相があのようなパワハラをおこなう背景は見えてこない。初めからあんなパワハラをしていたら、党首になれないと思うのだが。
 「鉄の女」と呼ばれるほど、意志が固く、実行力がある。”国”のために必要と思うことは、犠牲を払っても行う強さ。それはこの映画でもよくわかる。
 世間では、ウーマンリブパワーが吹き荒れてはいたが、女性の社会進出は希少な頃。
 イギリスでも、”初”の女性首相として、陰口は叩かれてはいるものの、それでも、男どもは、サッチャー首相を党首にと投票しなければならなかった。こき下ろしは描かれているが、彼女を首相にした背景は描かれていない。見た目と話し方を変えるシーンは出てくるが、それで当選するなら俳優・女優・モデルは皆首相になれる。本質は描かず、プラスαしか描かない。政策的な面で、マーガレットさんが選ばれたのか、マーガレットさんの魅力で人々を引き付けていったのか。大臣等の業績を評価されたのか。デニス氏の財力?

サッチャー首相の人柄も、家族との関係も、政治家としての評価も、さわりだけ。
 ご本人がまだご存命の頃に制作された映画。ご家族もご存命。
 原作本はあるということだが、ご本人の回想録ではない。
 「こう思っていたのではないか」等のフィクションは加えられない。
 ドラマが薄くなるのは仕方がないことであろう。
 とはいえ、もう少し視点を絞って、もう少し調べてから映画化してほしかった。

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とみいじょん

3.5晩年過去を振り返り思い出されるいろいろな事

2023年11月10日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

メリルストリープ扮する年老いたマーガレットサッチャーはミルクが高くなったと嘆いた。マーガレットが外へ出ると警備が騒いだ。どうもボケてきてる様だ。

人間誰しも年を取り衰えていくのだが、ボケはきついね。思えば政治家の妻を持つ夫も大変だったろうね。晩年になると過去を振り返りいろいろな事が思い出されるだろう。家庭を犠牲にしてなりえた首相の座。しかし配偶者が既にいないとなると孤独だろうな。

そもそもご本人は女性首相なんてとんでもないと思っていたようだね。でもかん高い声を抑えて威厳がある話し方を研究したりして準備をしていったんだね。

それにしてもこんなに幻覚が現れると現実か否か分からなくなってくるだろうな。

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重

4.0ヘレン・ミレンの演技はうまい!

2023年11月9日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

知的

BSで視聴。ヘレン・ミレンのマーガレットサッチャーの演技は素晴らしかった。演技のうまさに感心。サッチャーのイギリスに対する思いも伝わった。

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ナベウーロンティー

2.0サッチャーの政治思想や功績は曖昧なまま「女性首相」と名言だけを強調した無内容な作品

2023年10月26日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

英国は1960~70年代、揺り籠から墓場までの社会保障制度や基幹産業の国有化などの反動で、国民負担の増加と勤労意欲の低下、既得権益の蔓延等の経済・社会的な問題が発生し、深刻な経済低迷に陥った。俗にいう英国病である。

その末期に登場したサッチャーは1979年~1990年、保守党政権の首相を務め、英国病から国を立て直して、その後の経済成長の基盤を作った。この功績あるが故に、こうした伝記映画まで作られ、主演したメリル・ストリープもアカデミー賞主演女優賞を獲得したのだろうと思ったのだが…いざ作品を見てみると、想像とは大きくかけ離れた内容なので驚かされた。

サッチャーは2013年に死去したが、「長女のキャロルは2008年、サッチャーの認知症が進み、夫が死亡したことも忘れるほど記憶力が減退していることを明かした。8年前から発症し、最近は首相時代の出来事でさえも詳細を思い出せなくなってきた」という(wiki要約)。

映画は認知症となった晩年の彼女を、残念な一介の老女として延々と描き、そこを起点にして少女時代~学生時代~政治活動の初期~結婚~初当選~教育相時代~党首選~首相時代~辞任をフラシュバックさせ挿入していく。
その結果、昔は偉かった老女が過去を回想していくものの、死んだはずの夫がしばしば登場するなど、現実と妄想と追憶の見境がつかない漠然とした内容となっているのである。

サッチャーは明確な新保守主義・新自由主義の政治家で、国有企業の民営化を進め、福祉政策の見直しを実施し、大規模ストが頻発していた労働組合の活動を規制したこともあって、見る側の政治的スタンスにより毀誉褒貶が甚だしい。
製作者側は政治思想によって観客層が狭まるのを恐れたのだろうか、彼女がいかなる政治思想の持主で、どんな政治的功績があるのか突っ込みたくないがために、それを曖昧なままとし、よく言えば「人間サッチャー」に重心を置いたものと思われる。

例えば、1981年労使関係法による二次ピケ(支援ピケ)非合法化、1982年雇用法によるクローズドショップ禁止等々により、労働組合の戦闘力や政治力は大幅に殺がれた。英国戦後史の分水嶺を画したと評される1984~85年の炭鉱労働者全国ストも政府の弾圧によって潰された。すべてサッチャーの「政治的功績」だw これらをクローズアップしたくなかった結果、映画は初の女性首相であることや、いわゆる名言を強調するのが関の山という無内容な作品となってしまったのである。

案の定、『デイリー・テレグラフ』は、「製作者がサッチャーに関して何を伝えようとしているのかが不明」と酷評している。

小生は1982年のフォークランド紛争の際、軍隊の派遣を逡巡する閣僚たちに向かって「わが内閣に男は一人しかいないのか」と叱咤したという有名なエピソードが好きだったが、どうやらこれは後付けのジョークらしく、本作にもそのシーンはない。
それはさておき政治家の伝記映画であるなら、製作者側も彼女の政治思想を誤魔化さず、功績を伝えるべきだった。本作はサッチャー肯定派、否定派双方から見てろくでもない内容だと思う。

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徒然草枕