岬の兄妹

劇場公開日:

岬の兄妹

解説

ポン・ジュノ監督作品や山下敦弘監督作品などで助監督を務めた片山慎三の初長編監督作。ある港町で自閉症の妹・真理子とふたり暮らしをしている良夫。仕事を解雇されて生活に困った良夫は真理子に売春をさせて生計を立てようとする。良夫は金銭のために男に妹の身体を斡旋する行為に罪の意識を感じながらも、これまで知ることがなかった妹の本当の喜びや悲しみに触れることで、複雑な心境にいたる。そんな中、妹の心と体には少しずつ変化が起き始め……。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭の国内コンペティション長編部門で優秀作品賞と観客賞を受賞。

2018年製作/89分/R15+/日本
配給:プレシディオ
劇場公開日:2019年3月1日

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(C)SHINZO KATAYAMA

映画レビュー

4.0倫理観が、価値観が揺さぶられる。胸ぐら掴まれたみたいに生を突きつけられる。

2019年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

悲しい

怖い

岬という場所は、生と死が入り混じるところと言われる。それがこの兄妹に当てはまるのかどうかはわからないが、少なくとも彼らが極限生活を余儀なくされることだけは確かだ。金もなくなり、保護も受けられず、ガスや電気も止まり、やがてティッシュを食らう。もう一歩進めば確実に死が待っていたはずだ。

彼らは終止符をただ素直に受け入れることはしない。それが倫理に反すること、それを侵すことで人間以下の存在に成り下がることを覚悟の上で、絶望と悔しさの悲鳴を上げながら、それでもどうにか生きようとする。これは何かを糾弾する映画でもなければ、ましてや万人の心を和らげる映画でもない。ある意味、ギリシア悲劇のごとく、考えうる究極の一線を越えながらただひたすらもがき、生きようとする兄妹の物語だ。易々と人にオススメはできないが、それでも胸ぐらをつかまれたみたいに生を突きつけられた。見る側の心に何が芽生えるのかを問われる一作だ

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牛津厚信

5.0人間への深い愛がある

2019年3月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

今村昌平の映画のようだ。あけすけに人間の見にくい部分を暴き出すが露悪的ではない、むしろここまで見つめることができること自体に、人間への深い愛情を感じる。綺麗事を吐くの簡単だが、人間には見にくい部分が必ずある。そこに目をつぶって、キレイなものだけ見つめる輩とこの映画の片山監督のように、醜悪さもしっかり見つめる人とどちらが、より人間を愛していると言えば、断然片山監督のが人間を愛していると思う。
困窮する生活、自閉症の妹に売春させる兄、売春の相手も社会の「底辺」にいるような人がほとんどだ。しかし、臭いものに蓋をすべきではない。現実にこういうことは存在している。
2人は貧しいし惨めかもしれない。しかし、不幸かどうかはわからない。人の幸せを勝手に自分のモノサシで測ってはならない。のんきに現代社会を不自由なく生きている人間には、持ちえないモノサシで彼らは生きている。これぞ価値観の多様性である。

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杉本穂高

4.5人間の根源に焦点をあてた作品

2024年6月8日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

見たくない…作品。
見るのをどうしても敬遠してしまう精神疾患を持つ人の物語。
足の悪い兄と精神疾患の妹の二人暮らし。誰が見てもどん底生活。
父はずっとまえにいなくなり、母も二人を捨てたようだ。
妹はふらふらとどこへでも行ってしまうことで、兄が仕事に行くときには妹を外カギと足かせで犬のようにつないでいる。
この妹という人物の心理状態に、人間の根源を重ね合わせ焦点を当てた作品。
この背後にある人間の三大欲求 食欲 睡眠欲 性欲 これで欲の99%が満たされる。
造船所のリストラで食うに食えない生活が始まってしまう。
やがて兄は妹に売春させる。妹は人間の欲求を満たされ満足するし、お金も入ってくる。
客はトラック運転手から始まり、ヤクザ、高齢者、独身者、そして中学生まで広範囲だ。
中でも小人症の客は彼女を贔屓にしてくれた。
しかし、妊娠していることがわかる。
兄の想いは中絶だが、そこに掛けるお金が惜しい。
ダメもとで贔屓客に妹と結婚してほしいとお願いするが断られる。
この場所に一人でやってきた妹は、「仕事」と大暴れして言うことを聞かない。
妹のそんな様子に言葉を失う兄。
そこにやってきた造船所に戻る話。兄は「お前らの所為で俺がこうなったんだ」と喚き散らすが、それは反応で、造船上の上司を見た妹がその上司と「仕事」をすると勘違いした行動をとったからだ。
夢の中で突然足が治る夢を見る。それが夢だとわかり水を飲み、妹の大きくなった腹にコンクリートブロックを投げつけようとするが、それさえできないことに消沈して泣きじゃくる。
目を覚ました妹は兄の様子を見て、自分が一番大切にしている貯金箱を差し出した。
妹に中絶させる兄。
造船所に戻ったある日、また妹がどこかへ行ってしまう。
ほうぼう探し、岬の先で妹を発見する。
妹に呼び掛けても妹はずっと海を見つめている。
そこに電話がかかってくる。
電話の音に反応してゆっくりと振り返る妹。
その反応に兄が驚きの表情を浮かべてエンドロールとなる。

マリコは、売春することで人が喜んでくれることを知った。それが同じ男で、しかもマリコの気持ちに寄り添うことができる男が、この世界にいることを知った。
彼といる時がマリコにとって一番幸せな時間。彼に呼ばれなくてもそこに行きたい。
やがて中絶と、もう「仕事」がなくなったことで、マリコの中には大きな喪失が生まれる。
あの男とも会うことはできなくなった。
それはおそらくコンクリートブロックを持った時のヨシオの心境と近しいものだったのだろう。マリコは朦朧としたまま雨の中、岬の先に立つ。
耳に届くのは波と風の音で、ヨシオの呼ぶ声などはそれにかき消されてしまう。
そこに聞こえてきた懐かしい着信音。
マリコにとって希望の音色。
それに反応したマリコを見て愕然となるヨシオ。
この作品を直視することに抵抗がある。しかし、人間の根源的欲求は抑えることができないことを示している。
この事実を精神疾患者を通して描いている。
しかしマリコの様子から感じるのは、性欲そのものではなく、好きな人に会いたいとか、その人を喜ばせたいという無償のものだ。
その無償を感じたとき、この社会がマリコにとっていかに不条理な世界なのかを感じ取ることができる。
作品の中に精神疾患者が登場するのは多いが、端然と彼らの心情に焦点を当てた作品は少ないように思うが、これはそこに焦点が当てられているすごい作品だった。

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R41

3.5もう見たくないです

7さん
2024年2月22日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:その他

ずっと苦しいです、、見ているのつらかった

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7
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