劇場公開日 2007年1月20日

「有罪判決のノルマを課す国家権力(但し国家権力に逆らわなければ執行猶予)」それでもボクはやってない HILOさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0有罪判決のノルマを課す国家権力(但し国家権力に逆らわなければ執行猶予)

2023年7月29日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、VOD

『踊る大捜査線 THE MOVIE』で分かった警察庁の国家公務員の階級社会。正義の味方はTVの中だけで現実の警察庁は階級社会だから信用出来ない。そして今回の映画では裁判すらもが階級社会だと分かった。正義を貫いて無罪判決を出すのは自由だが出世したければ有罪にしろ、検察と無用な争いは避けろ、それが(出世を目指す)裁判官の仕事らしい。 以下、裁判官の階級と警察庁との対応策を簡単に説明。

裁判官のトップ(つまりキャリアの頂点)は、 最高裁判所裁判官(最高裁判所長官)で皆がそれを目指す。 法律を使ったドラマに出てくる「最高裁の判事」とは最高裁判所判事の事で、 長官のナンバー2である。 正名僕蔵が演じる最初の裁判官が、 無罪判決を出す出世に興味がない正しい裁判官。 小日向文世が演じる交代した裁判官が、 最高裁判所長官を目指すべく有罪判決に必要な手続きを進める(つまり有罪判決のノルマ達成に勤しむ)キャリア裁判官。

警察庁⇔検察庁⇔裁判所のトライアングル。 警察庁は点数稼ぎの為の違法捜査、検察庁は捏造書類に基づき違法起訴、 裁判所は検察庁の起訴する為に用意した捏造書類を元に有罪にすべく動き違法判決、 そして冤罪となる犠牲者が出鱈目に裁かれ有罪判決となる(但し国家権力に逆らわないと事前に司法取引が済んでいれば執行猶予で有罪判決は建前と可する)。

ちなみに劇中では求刑4ヶ月の実刑判決に対し、 判決は懲役3ヶ月に執行猶予3年だった(ハッピーエンドじゃないのが衝撃だった)。

検察庁と警察庁の面子の為の有罪判決で、 善意の第三者の被害者(要は冤罪)を罰するのは非人道的故に執行猶予を付ける事で、 警察庁や検察庁に逆らうなって見せしめプラス大人しくしとけば悪いようにはしないって、 そういう意味の判決だろうと推測出来る。

所轄の違法捜査もある意味では現実的。 どうせ裁判になれば裁判官が違法捜査を揉み消すべく動き、 無罪を証明する物証は全て裁判官の権限で却下されてしまう。 だから所轄と取引して穏便に済ますのが現実的だし安全(法廷では所轄のノンキャリアの偽証を裁判官が信憑性を持たせるように捏造)。

ちなみに所轄の違法捜査を裁判で訴えててもキャリア裁判官は無視する(信じると出世に響く)。 だから所轄の悪徳警察官に当たれば不運だと諦めて取引に応じた方が安全(つまり嘘でもいいから所轄の悪徳警察官のストーリーに従うと執行猶予付きで穏便に出られる)。

HILO