劇場公開日 2002年12月14日

「2002年版のメカゴジラの最大のポイントは、ゴジラの遺骨がその内部にあり、それを中心にして新しく再建された存在だと言うことです」ゴジラ×メカゴジラ あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.02002年版のメカゴジラの最大のポイントは、ゴジラの遺骨がその内部にあり、それを中心にして新しく再建された存在だと言うことです

2022年7月20日
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鑑賞方法:VOD

2002年12月公開
公開当時はさほど良い印象は有りませんでした
もっとこうならないのか!というオタクの思い入れがそのときは強かったように思います

ところがひさびさにみたら、超面白い!素晴らしい!と激賞するようになっていました

こまけーこたぁいいんだよ!

そういう鑑賞態度になって観ると、本当に傑作です
1992年のゴジラvsメカゴジラより断然面白いと心底思います

ロボットはやっぱり中に乗ってこそ!なんてオタク心でこだわっていましたけれど、これもドローンの一種なのだと思って観ればあら不思議!格好いい!
そりゃあ、今時こういう操縦だろ!とくるっと掌返しです

本作のメカゴジラは、1992年版と違い23世紀の未来テクノロジーを元にしていません
あくまでも2002年当時の現代人の科学技術力で建造されています
もっともその科学技術力は現実より半世紀以上も進んでいるようです

この世界は、本作と次作だけの独自の世界です
1954年のゴジラ襲来が史実である世界でも、前作とも異なります

特に大きく異なのはオキシジェンデストロイヤーでゴジラは駆除されたことは秘密ではなく、広く一般に知られている世界と言うことです

なので前作の防衛軍が存在する世界ではなく、その代わりに特生自衛隊という対特殊生物自衛隊が存在する世界となっています
つまり憲法改正がされていない世界です
その代わり自衛隊法が改正されて、特生自衛隊が新設されている世界という
エヴァの戦略自衛隊ぽい位置付けです

本作のメカゴジラは、1954年のオキシジェンデストロイヤーで骨になってしまったゴジラの、その骨を元に作られた言わばサイボーグです

劇中では、ゴジラの骨髄から抽出したDNA の4つの塩基で同時に並列計算するというDNA コンピューターの説明があります
それでメカゴジラの巨体を高速で制御できるという設定です

これ、本当に研究されているものですでも20年経ってもあまり進展はなく、今は量子コンピューターが本命のようです

このDNA コンピューターだけなら、なにもゴジラの骨格をメカゴジラに組み込む必要は有りません

明確に説明されませんが、メカゴジラの中身は、骨髄から抽出したDNA でゴジラ細胞を培養して人工筋肉を作り、その骨にとり付けたもののようです
人工筋肉を維持するための体液の循環はパイプとポンプが仕込まれているのでしょう

その肉体に表皮の変わりに装甲板を鎧のようにまとっているわけです
武装や各種のメカは、その金属製の外皮と一体化されて装備されているように見えます
つまりバイオとメカのハイブリッドです
動力源も電力でケーブルこそ有りませんが、活動限界があります
マイクロウェーブ送電でワイヤレス充電できることを除けば、ほとんどエヴァンゲリオンと同じ構造です

1992年版のようにロケット推進で垂直発進して飛行する能力はありません
輸送と遠隔操縦と支援攻撃を行うAC-3 しらさぎという垂直離着陸機がワイヤーで吊り下げて空輸します
大変現実的です
これもエヴァンゲリオン的です

基地は1992年版の筑波ではなく八王子の地下に建設されています

メカゴジラは劇中では、三式機龍と呼ばれます
2003年度に特生自衛隊に採用された、機械化された龍という意味合いです
龍とは巨大生物と格闘戦闘する兵器の意味で付けられた訳です

この2002年版のメカゴジラの最大のポイントは、ゴジラの遺骨がその内部にあり、それを中心にして新しく再建された存在だと言うことです

つまり機龍とは、防衛力を高める為に巨大化していく自衛隊のアナロジーになっているように思えます

圧倒的な軍事力に対抗するために、核兵器を持たず通常戦力だけで対抗しようとするならば、敵とまともに戦える強力な兵器を保有しなければならないのは自明のことです

しかし、その中身がゴジラの遺骨のような旧軍の軍国主義だったなら?
いつ暴走するかもしれないではないか?

それが本作のテーマなのだと思います

それ故に機龍のオペレーターは若い女性なのです

太平洋戦争も、朝鮮戦争も、ベトナム戦争も、60年安保も、70年安保も知らない世代の女性です

彼女は戦前の軍部とは切り離された人間です
そこからは全く無関係に育ち、自衛隊に入った女性です
彼女にあるのは親を守りたかったという素朴で自然な防衛への考え方だけなのです

それでも機龍はゴジラとの最初の戦いで暴走します
しかしそれを防止する工夫を凝らした次の出撃からそのようなことはなくなります

そして結局のところゴジラに対抗しえる存在は機龍しかなかったのです

暴走の危険を防ぐ工夫と、新しい世代の考え方こそが大事なのだという結論をもって本作はエンドマークを迎えます

本作公開からちょうど20年
ウクライナへのロシアの侵攻を私達は今年目撃しました
明日は我が身である事もひしひしと感じてます
政府は防衛費の倍増方針を表明しています
参議院選挙の結果はご存知の通り、憲法改正勢力が国会の三分の二を占めました

前作と本作で提起されたアナロジーが、いま現実になろうとしているのだと思うのです

監督は手塚昌明
前作は平成ガメラを撮った金子修介監督でしたが、本作、次作と担当します
ゴジラ愛のある監督です

特撮は菊地雄一
この人は、樋口真嗣特撮監督の下でガメラ3の特撮助監督をしていた人です

樋口真嗣さんは、「ミニモニ。じゃムービー お菓子な大冒険!」の監督になった為、またもゴジラ映画には参加出来なかったのです
この映画は東映の作品で公開日はなんと本作と同じ12月14日でした
思いっきり競合してしまいました

東宝特撮部隊から特技監督を復活させることできるのは、次作の浅田英一さんからです
それも出戻りみたいです
しかし、そんな出身母体なんてどうでも良いことです
特撮は映像こそすべて
一番良い特撮映像を撮れる人間がゴジラ映画を撮るべきなのです
もっとも、タイミングが合わず一番の人が撮れるとは限りません
天の時が樋口監督に回わってくるのは2016年まで掛かることになりました
それがシン・ゴジラです

本作の特撮は上々の出来だと思います
迫力ある破壊シーンを堪能できます

蛇足
ゴジラXメガギラスのヒロイン役だった田中美里が品川東病院の看護婦役で再出演、しかも、そのとなりには永島敏行がガメラ2を思い出させる自衛隊の野戦服とヘルメット姿で登場します
他にも谷原章介もチラリと顔を見せます
嬉しい限りです

あき240