劇場公開日 2017年6月10日

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「全体主義の狂気」残像 a0064さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0全体主義の狂気

2019年1月24日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

怖い

知的

難しい

この映画を、社会主義の失敗の糾弾と捉えるべきではない。芸術の弾圧と歪曲は、反共産主義を掲げたナチスや大日本帝国でも見られた現象だからだ。行き過ぎた全体主義、ひいては他者の見解を頑なに認めようとしない人間の本質的な部分の過剰な発現に警鐘を鳴らしている作品と見るべきだ。
私自身、この高度資本主義経済社会において、生まれながらの格差を見せつけられることが多く、その理不尽さを体感してきた人間である。だからこそ、労働者の結束と富の平等な分配という理念には心踊るところがあると感じる。
しかし一方で、私は芸術のジャンルとして、わけのわからないもの、不気味なもの、説明のつかないものを好む。例えば、佐々木マキ氏の漫画などがその例だ。佐々木マキ氏は、漫画の神様に狂人呼ばわりされたことがあるそうだが、私は漫画の神様のことも好きなので、この話には複雑な気持ちになる。しかし、漫画の神様は他者の芸術家の自由に干渉し過ぎたのではないかと思う。
どんなに偉大な人物でも、権威者になると他の考えを討伐したくなるものらしい。それはいけないことだ、と反論できる環境を確保しておくことが重要だろう。

a0064