FLEE フリー

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劇場公開日:

FLEE フリー

解説

20年の時を経て祖国アフガニスタンからの脱出を語る青年アミンの姿をとらえたドキュメンタリー。主人公をはじめ、周辺の人々の安全を守るためにアニメーションで制作され、アカデミー賞で史上初めて国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞、長編アニメーション賞の3部門ノミネートを果たした。また、アヌシー国際アニメーション映画祭でも最高賞となるクリスタル賞ほか3部門を受賞している。父が当局に連行されたまま戻ることがなかったアミンは、残された家族とともに生まれ育ったアフガニスタンから脱出した。やがて家族とも離れ離れとなったアミンは、数年後たった1人でデンマークへと亡命する。30代半ばとなり、研究者として成功を収め、恋人の男性と結婚を果たそうとしていたアミンだったが、彼には恋人にも話していない20年以上も心に抱え続けていた秘密があった。親友である映画監督の前で、アミンは自身の過酷な半生を静かに語り始める。監督は自身も迫害から逃れるためにロシアを離れたユダヤ系移民であるヨナス・ポヘール・ラスムセン。

2021年製作/89分/G/デンマーク・スウェーデン・ノルウェー・フランス合作
原題:Flee
配給:トランスフォーマー
劇場公開日:2022年6月10日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第94回 アカデミー賞(2022年)

ノミネート

長編ドキュメンタリー賞  
国際長編映画賞  
長編アニメーション賞  

第79回 ゴールデングローブ賞(2022年)

ノミネート

最優秀長編アニメーション映画賞  

第73回 カンヌ国際映画祭(2020年)

出品

カンヌレーベル「アニメーション」
出品作品 ヨナス・ポヘール・ラスムセン
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(C)Final Cut for Real ApS, Sun Creature Studio, Vivement Lundi!, Mostfilm, Mer Film ARTE France, Copenhagen Film Fund, Ryot Films, Vice Studios, VPRO 2021 All rights reserved

映画レビュー

5.0記憶の中にだけある事実を取り出すアニメーション

2023年9月30日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

人の記憶は直接カメラで撮影できない。アニメーション・ドキュメンタリーというジャンルが重要なのは、カメラで今現在、撮影可能なものだけが事実ではないということを言えるところにある。主人公アミンが蓋をし続けたアフガニスタン時代と難民としての過酷な記憶は、カメラで撮影不可能だが、事実だ。その事実を描くためにアニメーションが必要とされる。とりわけタリバン以前のアフガンの映像はあまり残っていないから、アミンの記憶にある、平和な時代のアフガニスタンの光景は非常に貴重だ。当然、難民として各地を転々とさせられた時もあのような旅にカメラは同行できない。実写の再現映像でもなくアニメーションでその記憶を再現することで、観客はよりアミンと記憶の共有をしやすい。抽象的であればあるほど、想像力は喚起される。
この作品がオスカーの長編ドキュメンタリー賞と長編アニメーション賞に同時にノミネートを果たしたことはとても大きな意味を持つ。映像の事実性というものについて、多くの人が思いを巡らすことになっただろうから。

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杉本穂高

4.0アニメーションとドキュメンタリーの可能性を広げた秀作

2022年6月28日
PCから投稿

これまで感じたことのない手触りを持った作品だ。内容としてはドキュメンタリーに属するのだろうが、しかしアニメーションを採用することでその印象や浸透の度合いは全く異なるものとなった。アニメにした理由が「匿名性を守るため」なのは大いに納得するところだが、と同時に、いわゆるフラッシュバック構造が本作の随所に挟み込まれている点もまた、アニメだからこそ。これにより主人公アミンの逃避行は単なる「語り」でなく、家族の温もりや心の機微が際立って伝わってくる「実態」となった。祖国を離れ、ソ連では理不尽な暮らしを強いられ、他国への脱出にも命がけの覚悟が必要だったアミン。さらに彼がずっと胸に秘めたものを口にする場面が印象的だ。この瞬間、彼が二つの長い道のりを歩み続けてきた事実が鮮明となり、よりいっそう尊さがこみ上げてくる。並走して描かれる現代の恋人との関係性も含め、人間の尊厳をめぐる旅路がギュッと詰まった秀作だ。

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牛津厚信

4.0テーマの重さ・深刻さと、ドキュメンタリーとアニメを融合させた柔軟さ・軽やかさ

2022年6月5日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

怖い

知的

アフガニスタンから脱出(flee)した青年を題材にしたドキュメンタリー映画と聞いて、まず昨年9月公開の「ミッドナイト・トラベラー」を思い出した。同作は監督とその家族の難民としての旅と暮らしを、本人と家族たちが数台のスマートフォンで撮影した手法がユニークだったが、本作「FLEE フリー」も手法のユニークさの点で引けを取らない。

本作の主人公は、諸事情(映画の中で具体的に明かされる)により本名を明かしていない。映画の中ではアミンという仮名が与えられているが、本人の特定につながる可能性のある周辺情報もぼかすか、事実から変更されているようだ。監督のヨナス・ポヘール・ラスムセンは、15歳の時に自身が住むデンマークのある町にアミンがやって来て以来の友人だったが、アミンが過去の過酷な体験をラスムセンに明かしたのはずっと後のことだったという。ラスムセン監督は友人の半生をドキュメンタリー映画化するにあたり、匿名性を担保するためにアニメーションで語ることを選択した。しかも、同じタッチのアニメで作品全体を語るのではなく、アミンの記憶に基づき客観的に再現するシークエンスは2Dのカラーアニメで、トラウマに結びつくような悲惨なシーンはモノクロ調の抽象的なタッチで描き分けられ、さらに時代時代の統治者や街の風景などが実写のフッテージで挿入される。

アミンとその家族が欧州へ逃れるために体験したことは、なかなか簡潔に言葉に代えられるものではないが、本作の秀逸な表現手法によって視覚的に“体感”することはできる。多くの人に鑑賞してもらい、難民問題に関心を持つ人、問題意識を深める人が少しでも増えることを願う。

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高森 郁哉

3.5ソ連の国旗が出てこない

2024年5月15日
iPhoneアプリから投稿

アンドリュー・ヘイは映画『異人たち』の中で、死なない限り救われない孤独なゲイの生き様をドラマチックに描いて見せた。🇦🇫から難民として🇩🇰へ逃れた経験のある人物をネタにした監督ラスムッセンの場合、むしろゲイであることが救いになるほど過酷な難民のリアルを、時折実写映像を交えながらドキュメンタリータッチで描いている。

本アニメを鑑賞する前にまず🇦🇫紛争について予習しておく必要があるだろう。
冷戦時代の1978年に成立した🇦🇫民主共和国(🇦🇫)と同国と軍事同盟を締結して介入・侵攻したソ連、それらの政府の政策に反対して総決起したムジャーヒディーンと呼ばれるイスラム聖戦士の間で勃発した戦争である。  (Wikipediaより)
🇺🇸🇬🇧をはじめ、🇵🇰、🇸🇦、🇮🇷のアラブ諸国に加え、当時ソ連と対立していた🇨🇳までムジャーヒディーン側を軍事援助、結果軍事侵攻していたソ連は1989年に🇦🇫から完全撤退。ソ連崩壊の基点となった事件である。

主人公アミンの父親はおそらくこの民主共和国側の人物であり、ゆえにムジャーヒディンの聖戦士にとらえられ処刑されたのだろう。共和国が軍事援助を求めたソ連への亡命を企てたのも、アミン一家に西側のコネクションが無かったからに相違ない。地元住民の🇺🇸🇬🇧に対する不信感も非常に根強く、🇺🇸🇬🇧が直接介入ではなく分離政策をとっていたことも多分影響しているのだろう。この聖戦士の残党が後にテロリスト化していった事実を我々は見逃してはならない。

🇷🇺の警察官が難民を道端でとっつかまえては公然とワイロを要求し、女性難民には集団レイプまでやらかすシーンには、バイデン支持派ならずとも胸糞悪くさせられることだろう。ゴルバチョフからエリツィンにいたるソ連ならびに🇷🇺公権力の腐敗ぶりは目を覆わんばかり。共産主義国家が自由主義を部分的に導入すると、必ずや特権的地位にいる公務員の汚職が蔓延るのである。🇨🇳しかり、🇷🇺しかり、🇷🇴しかりなのだ。習近平やプーチンが強権を発動しえない状況をよくご理解いただけたと思う。

叔父さんが住んでいる🇸🇪に何としても逃れたいアミン一家だが。ソ連の安アパートで、1日中部屋に閉じ籠り🇲🇽のメロドラマをながめながら1年をやりすごす。亡命のための金がたまってさてようやっとバルト海を横断するボロ船に乗り込んでみれば、🇳🇴の豪華客船に見つかって🇪🇪へ強制送還されてしまう。二度目の亡命によってかろうじて単独🇩🇰へ入国することができたアミンは、そこで過去の自分を捨て去らなければ新しい国で生きていけないことを学ぶのである。

そもそもゲイという言葉すらない祖国🇦🇫では同性愛者であることを隠し通し、🇩🇰では家族がまだ存命にも関わらず天涯孤独の身であると偽らなければ生きていけない、とアミンは思い込んでしまうのだ。大学を出て職も見つかり、フィアンセから一緒に住む家を探そうと提案されるのだが、元難民としてのトラウマがアミンになかなかうんと言わせないのである。数年後🇸🇪に住む叔父さんや姉さんと再会したアミンは、自分がゲイであることをカミングアウトする、過去の呪縛から自分を解き放つために。

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かなり悪いオヤジ
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