枯れ葉

劇場公開日:

解説

フィンランドの名匠アキ・カウリスマキが5年ぶりにメガホンをとり、孤独を抱えながら生きる男女が、かけがえのないパートナーを見つけようとする姿を描いたラブストーリー。カウリスマキ監督による「パラダイスの夕暮れ」「真夜中の虹」「マッチ工場の少女」の労働者3部作に連なる4作目で、厳しい生活の中でも生きる喜びと誇りを失わずにいる労働者たちの日常をまっすぐに映し出す。

フィンランドの首都ヘルシンキ。理不尽な理由で失業したアンサと、酒に溺れながらも工事現場で働くホラッパは、カラオケバーで出会い、互いの名前も知らないままひかれ合う。しかし不運な偶然と過酷な現実が、2人をささやかな幸福から遠ざけてしまう。

「TOVE トーベ」のアルマ・ポウスティがアンサ、「アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場」のユッシ・バタネンがホラッパを演じ、「街のあかり」のヤンネ・フーティアイネン、「希望のかなた」のヌップ・コイブが共演。2023年・第76回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞。

2023年製作/81分/G/フィンランド・ドイツ合作
原題:Kuolleet lehdet
配給:ユーロスペース
劇場公開日:2023年12月15日

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第81回 ゴールデングローブ賞(2024年)

ノミネート

最優秀主演女優賞(ミュージカル/コメディ) アルマ・ポウスティ
最優秀非英語映画賞  

第76回 カンヌ国際映画祭(2023年)

受賞

コンペティション部門
審査員賞 アキ・カウリスマキ

出品

コンペティション部門
出品作品 アキ・カウリスマキ
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映画レビュー

4.0枯れ葉舞う季節と時代をほのかな灯りで照らす

2023年12月28日
PCから投稿

久々に我々のもとへ帰ってきたカウリスマキ。その作品はブランクを一切感じさせず、どこを取ってもトレードマークに満ちた、混じりっけなしのカウリスマキ映画だった。主人公は相変わらず孤独で、無口。それでいて心のどこかに譲れない想いや悩みを抱えていたりする。そんな中で出会った男女は、忘れえぬときを過ごした後、悲運が重なってなかなか再会できない・・・。このカウリスマキらしい運命の采配に翻弄される人々がおかしくて、愛おしくて、と同時に、再会を願う彼らの切なる眼差しにギュッと胸が締め付けられたりも。ラジオからは絶えずウクライナの戦争被害を知らせるニュース。二人の雇用も不安定で、日常生活は不確かさを増している。そんな時代の荒波の中で、二人の出会いは仄かな幸せの明かり。本作には彼らのみならず、観客の心に尊い光をもたらす優しさと温もりがある。辛い時、厳しい時こそ、人類にはカウリスマキ映画が必要なのかもしれない。

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牛津厚信

4.0愛想少なめの人物らが醸す滋味。新作なのに懐かしいのもアキ・カウリスマキならでは

2023年12月14日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

幸せ

無表情というわけではないが、喜怒哀楽の感情が大きく表れることはない。アキ・カウリスマキ監督の映画に出てくる人々はたいていそうだ。引退宣言の6年後に発表した新作「枯れ葉」でもそれは変わらない。メインのアンサとホラッパはもちろん、酒場にいる客らまでもが寡黙で、憂いを帯びた瞳で自省するかのように存在している。劇中歌を演奏する姉妹デュオ、マウステテュトットもツンとした顔で淡々と歌う(コーラスワークがなかなか良い)。しかしだからこそ、彼ら彼女らの眼差しや口元のわずかな変化から感情の揺らぎがじわじわと染みるように観る側に伝わってくるのだろう。

日本通のカウリスマキ監督が昭和のすれ違い恋愛ドラマ「君の名は」を知っていたかどうかはわからないが、ロシアによるウクライナ攻撃のニュースがラジオから流れるこの1~2年の設定で、携帯電話もあるのになかなか再会できないでいる2人の緩やかに進行するストーリーは、合理化と効率化が追求され時間に追われて消耗した現代の大人を癒すノスタルジックなおとぎ話のようでもある。何かとあわただしい師走に日本公開されるのも良いタイミング。本編81分、ほっと一息つきたい時の鑑賞がおすすめの愛らしい小品だ。

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高森 郁哉

4.0ラジオのニュースと音楽のチカラ

2024年5月19日
PCから投稿

心理描写と場面転換は歌(音楽)で、
アキ・カウリスマキ監督は64歳で、年老いる年齢ではないですね。
6年前には引退を宣言。
2017年の最後になる筈の映画『希望のかなた』はとても好きな映画
でした。
移民問題を扱った映画です。
長くなりますが、2018年7月に書いた覚書を引用させてもらいます。

当時シリア内戦によりシリア難民がヨーロッパ諸国に
多数押し寄せる世界情勢で、
フィンランド政府は押し寄せる多数のシリア難民に苦慮していた。
難民青年クーリドに老人は優しく寝床と仕事を与える。
そしてこの映画には愛らしいアキ監督の愛犬が登場している。
生き別れの妹を探すクーリドに苦難は続くのだが、
微かに希望を感じさせるラストは本作のラストとも繋がる。
ここで特筆したいのは、流行らない老人のレストランが、
日本風寿司レストランに変わること。
ハッピ、ハチマキ、日本酒、味噌汁、おまけに招き猫まで登場。
アキ監督の日本好きが偲ばれるシーン続出。
好感を持ちました。
フィンランドといえば、荻上直子監督の『かもめ食堂』が大人気だが、
この食堂ではアンサの食べる【シナモンロール】がメニューに
追加される。
アニメオタクの大学生の“トンミ・ヒルトネン“が、豚身昼斗念と
小林聡美と片桐はいりが影で呼ぶのだ。

何故アキ•カウリスマキは一度興味を失った映画制作の現場に
戻ってきたのか?
ひと昔前の日本の『君の名は』みたいなラブストーリー。
ひとえに何回も挿入されるラジオ放送。
ロシアのウクライナ侵攻のニュース。
これが聞かせたくて映画の撮影をしたのではないのだろうか?
古色蒼然としたストーリーに音楽がアクセントを付けリードしていく。
英語のロックンロールに始まり、一瞬聴こえるグリーグの組曲
「ペールギュント」や「竹田子守唄」そしてチャイコフスキーの「悲愴」
しかし特筆すべきは姉妹のシンセとギターデュオの“マウテテュトット“の
エレクトロポップ。
“目に見えない1000の錘(おもり)につぶされそう“
“自分の墓まで辿りつけるのか“
“私は囚人、永遠に“
“墓場すらフェンスだらけ“
題名は「悲しみを身にまとい、失望に身をまかせ」だ。
可愛い美人姉妹の恐ろしいほどの諦観にたじろぐ。
フィンランドの若者の心はこんなにも荒廃しているのか?
核戦争後の世界のようだ。
映像表現より一曲の歌の破壊力。

中年男女の無愛想でしかも無表情に求め合う【愛】は、
可愛い犬を連れた強い女と、それに従う松葉杖の男が
幸せそうに歩いて、
ラストで終わる。

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琥珀糖

3.5【生き方が不器用な男女の恋の行方を、アキ・カウリスマキ監督ならではの独特のタッチで描いた作品。「希望のかなた」のプロモーション中に引退宣言をした監督が新作を製作してくれた事が嬉しき作品でもある。】

2024年5月16日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

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NOBU