男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け

劇場公開日:

解説

“男はつらいよ”シリーズ第17作目。フーテンの寅が捲き起こす人情喜劇で、今回は風変りな日本画壇の大御所の老人と芸者が相手役となる。脚本は「男はつらいよ 葛飾立志篇」の朝間義隆、監督は脚本も執筆している同作の山田洋次、撮影も同作の高羽哲夫がそれぞれ担当。

1976年製作/109分/日本
原題:Tora-san's Sunrise and Sunset
配給:松竹
劇場公開日:1976年7月24日

ストーリー

春、4月。東京は葛飾柴叉の帝釈天は、入学祝いの親子連れで賑わっている。“とらや”を営むおいちゃん夫婦は、寅の妹さくらの一人息子・満男の新入学祝いで、大忙し。そんな所へ、久し振りに寅が、旅から帰って来た。ところが、さくらが元気がないので寅が問いただしてみると、満男の入学式の時に、先生が満男が寅の甥であると言ったところ、父兄が大笑いしたというのだ。寅はそれを聞いて怒ったが、おいちゃんたちに、笑った父兄より、笑われる寅が悪い、と決めつけられて大喧嘩の末、家を飛び出した。その夜、寅は場末の酒場でウサンくさい老人と知り合い、意気投合して、とらやに連れて来た。ところが翌朝、この老人はぜいたく三昧で、食事にも色々注文をつけて、おばちゃんを困らせる。そこで寅は老人に注意すると、老人はすっかり旅館だと思っていた、お世話になったお礼に、と一枚の紙にサラサラと絵を描き、これを神田の大雅堂に持っていけば金になる、といって寅に渡した。半信半疑の寅だったが、店の主人に恐る恐るその絵を渡すと、驚いた主人は7万円もの大金を寅に払ったのだ。この老人こそ、日本画壇の第一人者・池ノ内青観だったのだ……。それから数日後、兵庫県・竜野。青観が生まれ故郷の竜野へ市の招待で来た時、偶然、寅と会った。市の役人は、青観と親しく話す寅をすっかり青観の弟子と勘違いして、二人を料亭で大歓迎。美人芸者のぼたんの心ゆく接待にすっかりご機嫌の寅。翌日、用事があると言って出かけた青観の代理で、寅は市の観光課長の案内で、昼は市内見物、夜はぼたんを連れてキャバレーやバーの豪遊に、観光課長も大弱り。その頃、青観は初恋の人を訪ねて帰らぬ遠い青春時代の感傷にひたっていた。やがて、寅はぼたんに別れを告げ、竜野を発った。夏が来て、とらやにぼたんが寅を訪ねて来た。ぼたんは、苦労して貯めた200万円をある男に貸したまま逃げられ、その男が東京にいるのをつきとめたので会いに来たのだった。おいちゃんたちは、いきりたつ寅を押さえて、社長をぼたんに付けて男に会いに行かせた。男は大きな中華料理屋を経営しているのだが、店は女房名儀で一銭もないと払おうとしない。巧みに法律の網をくぐりぬけているのだった。烈火の如く怒った寅だったが、おいちゃんたちに慰められ、ぼたんは「その気持だけでうれしい」と涙を流すのだった。そこで寅は、青観に事情を話して、絵を描いて貰って金にしようとしたのだが「金のために絵を描くことはできない」とはねつけられたため、大憤慨して青観の家を飛び出してしまった。一方、ぼたんは寅の温い思いやりを背に、竜野へ帰って行った。夏も盛りの頃。旅に出ていた寅はぼたんに会いに、ふたたび竜野を訪れた。ところが、ぼたんのところに青観の絵が届けられていたのだ。寅は青観を口汚くののしったことを詫びるために、東京の方角へ向かって手を合わし、感謝の言葉をくり返すのだった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

5.0【“真っ赤な牡丹の絵”寅さんの漢気が見事に表現された逸品。宇野重吉演じる絵画の大家の飄々とした姿や芸者ぼたんを演じた太地喜和子の魅力が横溢した作品。今作はシリーズ中でも実に粋な逸品なのである。】

2024年5月29日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波、VOD

悲しい

知的

幸せ

■寅さんはとらやの皆と、満男の小学校入学祝をしようとするがいつものように喧嘩して、駅の飲み屋で呑んでいる。そこで出会ったルンペン風の初老の男が無銭飲食で捕まりそうになる姿を見て、代わりに金を払いとらやに連れ帰る。
 だが、男はとらやを宿屋と思っていたが、勘違いに気付きとらやの皆が自身の鰻代まで払ってくれた事を知り、一枚の絵をさらさらっと描き、寅さんに神保町の店で売って来てくれと頼む。
 寅さんは、渋々その絵を持って行くがナント7万円で売れ、ビックリ仰天。その男は日本絵画では高名な画家、池ノ内青観(宇野重吉)だった。
 そして、寅さんは青観と彼の生地である播州龍野で再会し、市役所の人達(中には、寺尾聡がいる。親子共演である。)に市内を連れまわされ、夜は座敷に呼ばれる。
 そこで、出会った明るい芸者のぼたん(太地喜和子)と、意気投合して飲み明かす。
 そして、寅さんはぼたんに軽く“そのうち、所帯を持とうな”と冗談を言って別れるが、ぼたんは且つて悪徳な男(佐野浅夫)から200万円を騙し取られていた。
 ぼたんは、東京まで出て来て、タコ社長と共に男に抗議をしに行くが軽くあしらわれる。
 怒った寅さんは、池ノ内青観に”でっかい絵を描いてくれよ。”と頼むのだが、断られる。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・今作は、寅さんと池ノ内青観との交流を軸に、不幸ながら笑って暮らすぼたんの関係性と物語構成がとても良き作品である。勿論、青観を飄々と演じた名優宇野重吉の姿と、残念乍ら早逝されたぼたんを演じた太地喜和子のひまわりの様な明るさと、抱え込んでいる悔しさ、哀しさを讃えた演技が見事な事も、作品に余韻を与えている。

・又、登場シーンは僅かだが、波乱の人生を送られた昭和初期の名女優である岡田嘉子さんが、青観と何か関りのある役で出演しているのも風情がある。詳しくは語られないが、推測するに、播州龍野の旧家のお嬢さんで青観と若き時に恋仲だった人ではないかなと思いながら観ていた。

<私がこの作品がとても好きなのは寅さんシリーズの中でも、二人の男(寅さんと青観である。)の漢気が、タイプは違えど実に粋に描かれているからである。
 寅さんが、播州龍野を再び訪れた時に、ぼたんが寅さんを家に招き、見せた大輪の真っ赤なぼたんの画。勿論、青観が描いたモノである。
 ぼたんは、売れば高値間違いなしの画を”絶対、譲らへん!”と言い、その姿を見た寅さんは青観が住む東京に向けて、暴言を詫び手を合わせて感謝の念を示すのである。
 名優が集った、素晴らしき作品である。勿論、脚本を書いた山田洋次監督の手腕には、他の作品と同様に脱帽する作品でもある。>

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共感した! 7件)
NOBU

5.0シリーズ第17作‼️

2024年4月17日
スマートフォンから投稿

泣ける

笑える

幸せ

全50作からなる「男はつらいよ」シリーズの中でも個人的には五本指に入る、大好きな作品‼️今回はヘンな老人、実は日本画の大先生・青観と寅さんの交流‼️そして一目惚れした美人芸者・ぼたんがアコギなお客に詐欺に遭った事を知り、寅さんは彼女のために一肌脱ごうとする・・・‼️まずはシリーズ恒例の寅さんの夢のシーンは、なんと「ジョーズ」もどきのホラー・パニック‼️そういえば公開当時「ジョーズ」が世界的なブームになってたんですよね‼️そして旅先から柴又へ帰った寅さんを待ち受けるのは甥っ子・満男の入学式騒動‼️そしてとらやを宿屋と間違えた宇野重吉さん扮する日本画の大先生・池ノ内青観がもたらす騒動‼️うなぎの代金6000円を600円と勘違いする寅さん‼️青観の絵をめぐる寅さんとタコ社長の大ゲンカ‼️そしてひょんな事から兵庫で再会した寅さんと青観‼️この二人の関係は過去作の中でも描かれてきた「寅さんとインテリ」のホントに理想形‼️どんなに相手が偉い人でも本音で向き合う寅さんはホントにステキです‼️そんな青観役の宇野重吉さんと、かつての恋人・志乃役の岡田嘉子さんが交わす龍野の静かな夜の会話は、名優二人による素敵なハーモニーで、この作品を気品高き名作にしてくれてます‼️そして太地喜和子さん扮する兵庫県龍野の芸者ぼたん‼️気っ風が良く、寅さんが「所帯を持とう」などとジョークを言えるピッタリの相性‼️ホントに太地喜和子さんハマり役です‼️浅丘ルリ子さんのリリーに次ぐお気に入りのマドンナですね‼️寅さんがそんなぼたんのために借金を取り返しに行こうとする場面の寅さんの口上のシーンは胸アツな名場面‼️「ぼたん、きっと仇は取ってやるからな!!あばよ!!」‼️そしてそして寅さんと青観の友情、寅さんとぼたんが想いが結実するラストシーン‼️寅さんが手を合わせ、青観に感謝‼️その余韻‼️ホント忘れられません‼️
「先生...勘弁してくれよ。俺がいつか言った事は悪かった。水に流してくれ、この通りだ。先生、ありがとう。本当にありがとう。」‼️

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活動写真愛好家

4.5宇野重吉と岡田嘉子

2024年3月4日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

久しぶりの寅さん鑑賞。

ぼたんを騙した男への怒りを捲し立てる寅さん。寅さんはいつも心の内を代弁してくれる。そして作品全体から、汗を流して働く人達への愛を感じる。

今回一番引き込まれたのは、宇野重吉と岡田嘉子が演じる再会と別れのシーンの美しさ。短い時間の中で、ふたりの過去からこれまでの生き方までををありありと想像させる。あたかも寅さんの中に往年の名作を一本取り込んだ様。

改めて寅さんの良さを感じるとともに、自分の根っこに戻ってくるような感覚。また観たいと思わせる作品だった。

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komasa

5.0とっても爽快

2023年9月12日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

笑える

楽しい

寅さんシリーズの良いところをしっかり持ち、気持ち良い作品。

人情、笑える会話、楽しめる作品ですね。

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シャカ
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