愛のイエントル

劇場公開日:

解説

学問が男だけのものだった今世紀初頭のポーランドを舞台に、男装して学校に入った女性をめぐるドラマ。ノーベル賞作家アイザック・バシェヴィス・シンガーが62年に書いた同名小説(晶文社)を、バーブラ・ストライサンドが15年かけて映画化にこぎつけたもので、彼女は製作・監督・脚本・主演・歌唱の5役を兼ねている。エグゼクティヴ・プロデューサーはラリー・ド・ワーイ、共同製作はラスティ・レモランデ。ストライサンドとともにジャック・ローゼンタールが脚本を執筆している。撮影はデイヴィッド・ワトキン、音楽の作曲はミシェル・ルグラン、作詞はアランとマリリンのバーグマン夫妻、衣裳はジュディ・ムーアクロフトが担当。出演はストライサンドの他に、マンディ・パティンキン、エイミー・アーヴィング、ネーミア・パーソフなど。ロンドンのリー・インターナショナル撮影所とチェコのロッツィリー村とプラハで撮影された。日本版字幕は戸田奈津子。デラックスカラー、ビスタサイズ。1983年作品。

1983年製作/130分/アメリカ
原題:Yentl
配給:MGM/UA=CIC
劇場公開日:1984年4月28日

ストーリー

1904年のポーランド、ヤネブの町。本屋の馬車を見掛けた一人の娘イエントル(バーブラ・ストライサンド)は、宗教関係の本を苦労して買い求め家へもどる。当時、学問は男だけのもので、女性は家事をやるものと決まっていたのだ。哲学者の父メンデル(ネーミア・パーソフ)は、窓にカーテンをかけて人に覗かれないようにして、イエントルにタルムードを教えてくれた。その父が死亡。髪を短く切ると、男の服を着てベシェブの町へ向かう。この町にイェシバ(ユダヤ教神学校)があるのだ。途中で、アヴィドール(マンディ・パティンキン)という学生と知りあい、彼の下宿についてゆく。彼女をアンシェルという名の男と信じているアヴィドールは、彼女の前で平気で裸になったりして、彼女をとまどわせたりした。彼女はヴィシュコバー師の口答試問を受けて、入学を許可された。アヴィドールは彼女を婚約者ハダス(エイミー・アーヴィング)の家へつれて行く。ハダスはイエントルとは正反対の男に従順な女性だった。以後、イエントルもアヴィドールの親友として、ハダスの家へ招かれることになった。しだいにアヴィドールに恋するようになるイエントル。やがて、アヴィドールの兄の死因が自殺とわかり、ハダスの父(A・コーデュナー)は婚約を破棄する。当時、自殺は許容しがたい罪悪だったのだ。イエントルはハダスの婿にと望まれ、アヴィドールも親友の君にならハダスを渡せるという。アヴィドールが町を去ると言い出し、ついにイエントルもハダスとの結婚を承諾する。結婚初夜、彼女はハダスに「妻には夫を拒む権利がある」とか言って、夫婦のまじわりをしようとしない。しだいにハダスもイエントルを愛するようになった。心苦しくなったイエントルは本を買いに行くと称して、アヴィドールとルブリンの町へ出かける。宿屋で彼女は自分の本当の姿を打ち明けた。初めは怒った彼も、イエントルを愛するようになる。だが、2人の考えはあまりにもかけ離れていた。イエントルはアヴィドールをハダスのもとへやり、自分は新天地アメリカ行きの船に乗り込む。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第56回 アカデミー賞(1984年)

ノミネート

助演女優賞 エイミー・アービング
美術賞  
主題歌賞
主題歌賞

第41回 ゴールデングローブ賞(1984年)

受賞

最優秀作品賞(コメディ/ミュージカル)  
最優秀監督賞 バーブラ・ストライサンド

ノミネート

最優秀主演男優賞(コメディ/ミュージカル) マンディ・パティンキン
最優秀主演女優賞(コメディ/ミュージカル) バーブラ・ストライサンド
最優秀作曲賞 アラン・バーグマン
最優秀主題歌賞
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映画レビュー

5.0ポーランドの津田梅子。 津田梅子もアメリカへ渡った。

2024年5月16日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:その他

「愛のイエントル」

DVDもなし。配信も一切なし。
輸入米国盤は、日本のDVDデッキでは再生が不可。
どうしたものかとずっと探し続けている本作。

バーブラ・ストライサンドの初監督、初主演の作品なのだ。
ポーランドの「ユダヤ人のタルムード学校」が舞台で、どうしても学校で勉強をしたかった一人の少女が、髪を切って結界を破るというストーリー。
彼女は、かくして男性社会の慣習と宗教の常識に真っ向から立ち向かうのだが・・

バーブラ・ストライサンドをして、女性の権利のアッピールは、いまだ黎明期であったのだろう。
後の作品「追憶」までの道のりはまだ遠く、イエントルの物語は、結局は “こういう流れ"になってゆく。
しかしそれでも、さわりだけでも、「教育の平等」について、世の中に問題提起の一石を投じた、これは記念碑的作品なのではないだろうか。

DVDも配信も結局見つからないので、仕方なく
YouTubeの断片的動画を片っ端から視聴してみた。
歌は、やっぱり絶品だ。作曲はミッシェル・ルグラン。アカデミー音楽賞、歌曲賞の受賞は納得。

・・・・・・・・・・・・・

「女の子も学校に行きたい」と、このイエントル同様、お父さんの後押しを受けてそれを口に出してみたら
頭を銃で撃たれたのはマララ・ユスフザイ。
15歳。スクールバスの中で。2012年。パキスタンでのこと。

医大が、女子受験者たちをこっそり足切りしていたのは、どこの蛮国かと思いきや東京でのオハナシ。それもつい最近のこと。

そういえば、
僕の子供時代を思い出すと、やはり女の子はいいとこ短大までで、4年制大学に行く人の話を聞くと「へぇ~」「ふぅ~ん」「変わり者だね、結婚を投げたんだね」と言われる時代だった。
冗談のような話だが、「女の就職は結婚までの腰掛け」だと、これは男女問わずに、親も子も、定石と信じていたものだ。

なぜここまで「女も人間なのだという当たり前」が世に受け入れられないのか、噴飯しながら理由を考えてみたのだが、

夫婦別姓とか、男女共同参画事業とか、小手先で小法律を作ってみたところで
てっぺんで“アレ" やっているなら、絶対に日本の女は頭打ちなのだ。
「女」は次期天皇を産ませるための(あからさまに)、取っ替え引っ替えのただの道具であり、借腹要員。
男系のみを聖なるものとして尊ぶことが、この国のあるべき姿=象徴なのだと信じているし、
呆れたことに男ばかりか女まで、いつまでも万歳三唱しているなら
決して日本のイエントルは無くならないだろうな。

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きりん

3.5名作だ

2017年9月27日
Androidアプリから投稿

名作だとは聞いていたが、こういう話とは思わなかった。イエントルが学問のなかにおいて悩むのかとずっと勘違いしていた。
女性も誰もが学べて、自由にいきられる今に感謝したい。
それにしても最後のタイトルロールのところで、アメリカのテレビドラマのソール役の俳優の名前を見て愕然!時間の流れを感じた。ソールも若いころはこんなにセクシーだったのだ!

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