道(1954)

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劇場公開日:

道(1954)

解説

イタリアの巨匠フェデリコ・フェリーニの代表作のひとつで、旅回りの芸人たちの悲哀を描き、第29回アカデミー賞で外国語映画賞を受賞した古典的名作。貧しい家庭に生まれ育った知的障害の女性ジェルソミーナは力自慢の大道芸人ザンパノに買われ、彼の助手として旅回りに出る。粗暴で女好きなザンパノに嫌気が差したジェルソミーナは彼のもとから逃げ出すが、捕まって連れ戻されてしまう。そんなある日、2人はサーカス団と合流することになり、ジェルソミーナは綱渡りの陽気な青年と親しくなる。青年の言葉に励まされ、ザンパノのもとで生きていくことを決意するジェルソミーナだったが……。「アラビアのロレンス」のアンソニー・クインがザンパノ、フェリーニ監督の公私にわたるパートナーであるジュリエッタ・マシーナがジェルソミーナを演じた。1954年製作で日本では57年に劇場初公開。2020年、フェリーニ生誕100年を記念した「生誕100年フェデリコ・フェリーニ映画祭」(2020年7月31日~8月20日=東京・YEBISU GARDEN CINEMAほか)でも上映。

1954年製作/108分/イタリア
原題:La strada
配給:コピアポア・フィルム
劇場公開日:2020年8月3日

その他の公開日:1957年5月25日(日本初公開)

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

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映画レビュー

5.0他者には理解されない孤独感と失望

2024年5月19日
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鑑賞方法:VOD

頭木弘樹の「絶望読書」という本の中に、カフカの「生きることは、たえずわき道にそれていくことだ。本当はどこに向かうはずだったのか、振り返ってみることさえ許されない。」という言葉が出てくる。

この作品のタイトルは「道(La Strada)」。
劇中でスポットの当たる、孤独を抱えた旅芸人たちは、カフカの言葉通り、出会いやちょっとした不運をきっかけに、わき道にそれながら、それぞれの道を歩んでいく。

一緒に旅を続けるザンパノとジェルソミーナも、隣には居るものの、互いに深い孤独の中に沈んでいる。

自分が体良く、口減らしされた寂しさも、妹たちや母のことを思って堪え、体罰を受けながら覚えた芸を仕事として飲み込もうとするジェルソミーナ。
頼るべきザンパノは、旅先で亡くなったはずの姉ローラのことを尋ねても何も語らず、客前では彼女を妻と言いながら、気まぐれに他の女とどこかへいって、一晩中彼女を置き去りにする。
ジェルソミーナは、そんなザンパノに嫌気が差し、彼の元を離れ故郷に帰ろうとするが、帰る方角もわからない。
途中、出会った祭りの人の群れに呑まれながら、見知らぬ街を彷徨う彼女。そこで出会うのが、綱渡りの青年だった。
胸に巻いた鎖を引きちぎるザンパノの芸と、言い間違いや振る舞いの可笑しさを笑わせるコントをやり続けている2人に比べ、大観衆を熱狂させる陽気な青年の見事な綱渡りには、ジェルミソーナだけでなく、映画を観ている私も圧倒された。

やがて、ザンパノに連れ戻されたジェルミソーナは、合流することになったサーカス団で彼と再会する。
綱渡りの青年は、ザンパノと古くからの知り合いらしく、ザンパノを気楽にからかうが、それが気に入らないザンパノは、ある日、彼にナイフで襲いかかり、警察に拘束され留置所で一晩過ごすことになってしまう。

激怒したサーカス団の団長は、ザンパノと青年どちらとも契約しないという言葉を残し、次の興行地へ向かう。ジェルソミーナには、サーカスの女たちから一緒においでと誘われるが、一人ザンパノのオート三輪の中に残る。

そこへ、警察の取り調べから、ザンパノより一足早く戻ってきた青年が現れ、ジェルソミーナと2人の語らいが始まるのだが…。

と、ここまで少し長く詳しくあらすじを追ったが、自分はこのジェルソミーナと青年のシーンと出会えただけで、この映画を観た価値があった。

冒頭に触れた「絶望読書」という本のコンセプトは、「絶望している時には、絶望の本が救いになる」だ。
自分はそこまで絶望している訳ではないと思っているのだが、綱渡りの青年の言葉と振る舞いには、涙がこぼれてきた。

綱渡りを生業にしていることでの死への覚悟とプライド。それ故に生まれる、他者には理解されない孤独感。ジェルソミーナをからかう素振りを見せながらも、彼女とザンパノを思う気持ち。そして、自分は仲間として選ばれなかったという深い失望への向き合い方。

彼が語る、何もできなくても「すべての存在には意味がある」という言葉。
「どんな意味?」と問い返されても、具体的な例なんて出せないのだが、そこに自分はぐっと来てしまった。

そこからラストまでの展開は、カフカの言葉通り「たえずわき道にそれていく」を地で行くが、とても切なく、だからこそ沁みる。

鑑賞したのは「日日是好日」で、名前だけ繰り返し登場してきたことに興味を惹かれてだったが、作者の森下典子さんが言うように、何度見ても、その時々に心が動かされることを予想させる作品。名画だと思う。

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sow_miya

3.5何とも言えない感情を揺さぶる作品。小石の気持ち

2024年4月17日
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鑑賞方法:VOD

泣ける

悲しい

知的

内容は、大道芸人へ親に売られるジェルソミーナと言う知的障害を持つ少女と傲岸不遜な大道芸人の2人のロードムービー。
 印象的な台詞は、『この世のものは何かの役に立っている。お前も同じだ。』サーカス一座に席を置いていた気のいい若者からジェルソミーナにかけられる言葉。その時に小石も同じだと言われるシーンは、道という幅広い解釈にも繋がる伝えたい一部分でもあったのかなと感じます。気のいい芸人の若者が別れ際に見せる間と涙ぐむ表情や精神錯乱状態のジェルソミーナの動物の鳴き声にも似た泣き声は、背筋が凍りつく様な恐ろしさがあり感動しました。
 印象的な立場は、綱渡りの気のいい芸人の若者と主人公ザンパノの人物対比です。この作品は、様々な対比構造で作られているので観ていて時代性もあり読み解くのに時間がかかります。それ故に何とも言えなく心に深く重くのし掛かる物があります。綱渡りは人生についても同じで、いつ死ぬかは覚悟の上の厭世観が付き纏うし、鋼鉄の肺を持つ男は力のみに頼りきり歳をとり力が無くなると、一気に自信喪失に陥る。修道院での尼さんとの会話もジェルソミーナとの対比で感情的に訴える諦観があり非常に感情を揺さぶられます。
 印象的な場面は、何と言っても『ザンパノ彼の様子が変よ!?』と急に発作の様に話出し動物が鳴く様に泣く姿はホントに演技か?と思えるほど引き付けられました。あの場面を見るだけでも十分価値はある様に感じます。
 映画の冒頭『ジェルソミーナ!』『ローザ(姉)が死んだ』との海辺の砂浜でジェルソミーナが、落胆する場面から始まます。最後では『・・・』無言で懺悔し自分に落胆するザンパノで終わるところ何回観ても素晴らしい。台詞は一つ一つとっても面白く。暗喩がふんだんに盛り込まれ技術の素晴らしさを感じました。個人的には、気のいい綱渡り芸人の若者が、ザンパノと喧嘩して時計が壊れたって言った後の死に関係する暗喩が分かりやすくて好きです。
 終始暗くて気分の楽しくなる様な話では無いですが、当時の時代性や人間の感情描写が非常に上手いので名作と言われる所以かと感じました。『ザンパノ。少しは私の事好き?』って聞くジェルソミーナは心温まる一場面でした。

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コバヤシマル

3.5ヒトは、道の旅芸人

2024年4月11日
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鑑賞方法:DVD/BD

 皮肉なもので、ヒトは、捨てたはずのものに、拾われたりして…。
 あんまり古い映画、興味ないんですけど、何だろう、今と違うなー、と思いつつ、今も、変わってないなーとも、思うんですよね。
 今の世の中、多様性とか、基本的人権とか、いろんなワード増えました。でも、何か足りないんですよ。この映画のスープのように…。
 やっぱり、何かの役に立っていると思いたいわけですよ。でもさ、その気持ちが強すぎると、おせっかいな勘違いになったり、あるいは「エヴァンゲリオン」のシンジ君になっちゃったり…。
 中道と云う言葉があります。極端な考えを持たない、極端な行いを慎む、バランス感覚。ところがこれまた、難しい。タイトロープの上で、パスタ食うより難しい。何故だろう?。
 ずっと昔から、ヒトは在る筈の無い答えが欲しくて、もがいているみたい。その回答のひとつが、この映画なのかな。
 ヒトは生涯をかけて、その答え合わせをするのかも。さて、皆様、明日はどんな芸を披露します?。あまねくヒトは、旅の途中、道の途中なのだから。

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機動戦士・チャングム

4.0映画終活シリーズ

2024年3月6日
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鑑賞方法:VOD

1954年度作品
アカデミー賞最優秀外国語映画賞受賞
ベネチア国際映画祭銀獅子賞受賞

ありがちな話し
もう、この歳では奥さん大切にしてます笑

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あきちゃん
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