劇場公開日 2020年2月28日

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「愛を組み立てるなら「ユニディ」へ」初恋 岡田寛司(映画.com編集部)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0愛を組み立てるなら「ユニディ」へ

2020年4月16日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

笑える

興奮

窪田正孝の照る肉体、小西桜子の虚ろ、染谷将太の笑気、ベッキーの純情な狂気、そして濃密な各キャラが放つエネルギーが、全て「悪人総進撃!ユニディ大血戦」へと導かれていく。血沸き肉躍る展開には、思わず拳を突き上げたくなる衝動に駆られ、時折哀愁を感じてしまう。大型ホームセンター・ユニディには“生活必需品がなんでも揃っている”。しかし、登場人物の大半にとって、それらは必要がない。誰もが“生活”を考えていないからだ。目の前にある道具は、本来の用途とは別に、命の削り合いのみに使用されていく。“生活”を渇望する者だけが、ユニディを再訪出来る権利を得られるのだ。

タイトルには似つかわしくないバイオレンス描写が際立つが、2つの光景を目の当たりにして「なんて優しい映画なのだろう」と感じた。まずは、電車内で幻影を見ているモニカ(小西)に対して、レオ(窪田)が「(モニカのようにはなりたくないが)その幻影を見てみたい」と微笑みかける場面。侮蔑の視線を送らず、その立場を忌避しながらも、「私は、あなたの見ているものを、見てみたい」と願う。安易な理解よりも、よっぽど救いの言葉になると感じた。

2つ目は、レオとヤクザ・権藤(内野聖陽)が車中で交わした会話から生まれたもの。本作に登場する“クソ野郎”の多くは、重曹で煮詰めても溶解しないほど、徹底した“クソ”である。彼らが参戦する“悪”VS“悪”という構図が築かれるが、それを“個”に置き換えた時に示されるのは、互いへの理解を示せたかもしれない可能性。どんなところにも“分かり合える者”がいる――のかもしれない。全ては「たられば」の想像だ。だが、対峙するものを単色の「黒」と決めつける前に、その中にあるかもしれない「小さな白」の存在を信じる。その思考は、頭の片隅に置いておきたい。改めてそう感じてしまった。

余談:クライマックス~エンドロールへ至る過程が、本当に美しい情景でした。

岡田寛司(映画.com編集部)