前科者

劇場公開日:

解説

罪を犯した前科者たちの更生、社会復帰を目指して奮闘する保護司の姿を描いた同名漫画(原作・香川まさひと/作画・月島冬二)を、「あゝ、荒野」の岸善幸監督のメガホン、有村架純と森田剛の共演で映画化。保護司を始めて3年となる阿川佳代は、この仕事にやりがいを感じ、さまざまな前科者のために奔走する日々を送っていた。彼女が担当する物静かな前科者の工藤誠は順調な更生生活を送り、佳代も誠が社会人として自立する日を楽しみにしていた。そんな誠が忽然と姿を消し、ふたたび警察に追われる身となってしまう。一方その頃、連続殺人事件が発生する。捜査が進むにつれ佳代の過去や、彼女が保護司という仕事を選んだ理由が次第に明らかになっていく。佳代役を有村、誠役をこれが6年ぶりの映画出演となる森田が演じるほか、磯村勇斗、リリー・フランキー、木村多江らが顔をそろえる。主人公・佳代が新人保護司として奮闘し、成長する姿を描く連続ドラマ版「前科者 新米保護司・阿川佳代」(全6話)が2021年11月にWOWOWで放送。その後の公開となる映画版は、原作にないオリジナルストーリーで描かれる。

2022年製作/133分/PG12/日本
配給:日活、WOWOW
劇場公開日:2022年1月28日

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(C)2021 香川まさひと・月島冬二・小学館/映画「前科者」製作委員会

映画レビュー

4.0綺麗事ではなく再生しようという前向きなパワーをもらえる応援作

2022年1月28日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:試写会

私は本作で「保護司」という仕事を知った。保護司とは、非常勤の国家公務員で、犯罪や非行に陥った人の更生を任務とする。給料は支給されず、民間のボランティアによって成り立っている。

お金なしで成立する信頼関係は素晴らしいと思うが、時間が拘束される上に信用と信頼が頼みの綱である保護司の情熱は、子供を育てる親のように見えた。
熱い新米保護司を演じる有村架純は、彼女だからこそ伝わる強さと脆さのバランスが絶妙で、なぜ保護司になったのか気になる存在感を醸し出しているところが謎の一つとなっている。一見は普通の女性でも、そんな彼女から見え隠れする意外な言動も目が離せない。
社会復帰まで、あと一歩である寡黙な男を演じる(前科者)森田剛は、役柄の根本にある愛情の強さを体全体で表現しており、役に入る憑依具合が素晴らしい。

変えられない過去から、いかにこれから成長していくのかという過程が本作の見どころの一つ。連続殺人に巻き込まれていくサスペンス要素がどのように2人に関わっていくのかが徐々に解明されていくところは時間を忘れてしまう展開で、ラストまで集中できる作りは私の予想を超えていた。

一度社会から外れると簡単には仕事につけない現実、人同士だからこその裏切りやすれ違い。それでも必要な存在は人、という本質が最後になってわかる作り込まれた良作。

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山田晶子

4.5有村架純と森田剛の説得力に感服

2022年1月7日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

日活とWOWOWの意欲的な取り組みが奏功し、素晴らしい作品に仕上がった。
有村架純が主人公・佳代に扮し、新人保護司として奮闘する姿を描いた連続ドラマ版「前科者 新米保護司・阿川佳代」は全6回で昨年放送されたが、いわば序章。映画ではその後が描かれているが、原作にはないオリジナルストーリーが紡がれている。

有村架純といえば、昨年は「花束みたいな恋をした」など大ヒット作に恵まれたが、筆者の個人的見解では今作の演技でベストパフォーマンスを更新したと言い切って良いほどに素晴らしい。
喜怒哀楽とか、そんな生半可な表現では事足りないほどに全身全霊で役を生きている。

その有村に対峙する森田剛がまた、、、本当に素晴らしい。
ネタバレを絶対にしたくないので、ぜひ2人の熱演をご鑑賞ください。
また、石橋静河と若葉竜也が仕掛けたアクセントも、たまらなく素敵だ。

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大塚史貴

3.5保護司という仕事

2024年5月28日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

泣ける

悲しい

難しい

WOWOWでドラマ版は見ていました。
その点からどう映画として見せるのかが気になっていましたが、ストーリーがすごく良かった。
保護司という馴染みのない仕事をダケではなく、事件とからませることで楽しんでみることができました。

ドラマで出てきたキャラが再登場するので、その点は映画飲みの人には背景が伝わりにくいと感じました。

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たけお

5.0一人の女性の心を純粋に描き出している

2024年5月9日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

主人公の阿川佳代は保護司。国家公務員でありながら報酬のないこの仕事を通じて、自分自身に向き合っている。
彼女の心の奥にある闇は、保護監察中の前科者と変わらないということが、ミドリの発言で気づかされる。
ミドリが借りようとした本の中に書かれた落書き。「殺す、殺す、お前だけなぜ生きている」
慌ててそれを取り上げる阿川。
「私にも他人に入って欲しくない場所がある」
「へ~、私って他人だったんだ」
阿川自身の心の闇に気づいた瞬間だ。
加えて工藤の事件によって、保護司という仕事の難しさが身に染みて分かる。「更生には何が必要なのかわからなくなった」
それはミドリが言った「警察も検察も弁護士も裁判官もみんな同じことしか言わない。さも社会の代表ぶっているけど、私たちみたいのがいるから偉そうにしてられるんだ」という言葉には、事なかれ主義の体裁上、前科者には何も感じないことが伺える。
阿川は、私も同じだということに気づかされる。どこか斜に構えていたのだ。
そして阿川がそこまでする理由が最後に語られる。
滝本に対し「なぜ、お前だけ生きている?」と書いたの?
滝本はそんなことはもう忘れたように「えっ?」ととぼけたように答えるが、阿川は「保護司になることが私が出した答えなの」という。
原点に立ち返ったのだ。それが阿川が工藤を諭した場面でも使われる。
エネルギーの伴った言葉には力が宿る。阿川の言葉に泣き崩れた工藤。
警察側の挙動に多少難ありな部分もあるが、
一人の女性の過去のトラウマ、それに向き合ってきたつもりだったがいつのまにか吞まれていたことに気づく。
原点に立ち返って再びトラウマと向き合えたことで、消せた落書き。
そこに下手な恋物語がないところがさわやかだ。
阿川は中学時代に起きた不幸な事件と当時の彼が持ってしまった怒りの矛先を知ったことで、自分自身の中に闇を作った。
保護司になってそれに向き合ってきたつもりだった。しかし現実はそうではなく、逃げていたことに気づいた。だから本気で修正する気持ちになった。
この作品は、単純な核と装飾されるべき部品がうまく収まっている基本的な構造をしているが、的が阿川一人に絞り込まれていて、わかりやすさと共感をうまく引き出すことに成功している。
とてもいい作品だった。

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R41
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