劇場公開日 2024年5月3日

「普遍的な法と人道主義」ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0普遍的な法と人道主義

2024年5月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2022年。アンドレアス・ドレーゼン監督。9・11とアフガン紛争以降、アメリカ軍の収容所として悪名高きグアンタナモ。息子がそこにいると聞いたドイツ在住トルコ人の母親が息子を取り戻すために5年にわたって苦闘する。
まずは単純なアメリカの独善的行動やグアンタナモの非人道的扱いを批判するものではないところが特徴。ドイツにいながらトルコ国籍にこだわり、イスラム教原理主義に惹かれていた主人公の姿もしっかり描いている。だからこそまさに、そのような疑わしい人であっても推定無罪の論理によって、法と人道主義は犯すことはできないのだ、という逆説的な描き方になっている。だから、からっと明るい一直線のヒューマニズム映画ではないし、母親のユーモラスな言動がそこかしこに見られてくすっと笑っても、どこか重苦しさが漂っている。
ここで問題になっている法と人道主義は内容を問わない極めて形式的なものだ。日本語タイトルとはことなって、具体的な法の条文を巡って法廷で戦う展開にはなっていないし、人道主義の具体的なあり方として解放を訴える展開にもなってない。法は法であるというだけで、人道主義は人道主義というだけで、内容とは関係なく形式的に持つ意味があるのだ。要するに、普遍的法と人道主義をめぐる映画。

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