劇場公開日 2024年5月3日

「原題Green Borderよりも付けられた邦題の方がわかりやすくしっくりくる珍しい作品ww」人間の境界 らまんばさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5原題Green Borderよりも付けられた邦題の方がわかりやすくしっくりくる珍しい作品ww

2024年5月17日
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鑑賞方法:映画館

ここ数年の間で観た映画の中ではズーンと重く、息の詰まるしんどい時間が最も長い映画だった。
先日の『ミセス・クルナス〜』のレビューめも人種系の問題について少し触れたけど、あの映画はミセス・クルナス(=ラビエ母さん)のおかげで重たくなりすぎない作りになっていた。変わって、こちらは最初の40分くらい(第1章:家族)が暗くて、重くて、理不尽すぎて、とにかく怖くて、120分フルでこの状態が続くようなら心がもたないから途中離脱もあり得るな……と不安すら覚えた。やりたい放題なんだよ、兵士たち!基本的人権が尊重されてない!とかそんなこと言ってる場合ぢゃない!家畜のような扱いを受けたとしてもとにかく生き延びることだけを考えて動かなければならない。だってあまりに辛すぎて生き延びようとする気力が奪われてしまってる人もあんなにたくさん出てきたもの。このまんまの痛い辛い痛い辛いの流れが最後まで……とならなくて本当に良かったε-(´∀`; )

同じ事象に直面しても、難民家族なのか、亡命を阻止する国境警備隊なのか、亡命希望者を助ける活動家なのか、立たされた立場によって捉え方や感じ方は異なる。みんな自分の正義に基づいて動いているんだ、そう言えればまだ良いけど自分の正義に基づいて動けているのは活動家たちくらい。自分ではない「誰か」によって「ステレオタイプ化」された「正義」のために職務を全うしようとする国境警備隊のポーランド人青年は自他の「正義」の狭間で揺れ動く、まさに「境界」の上のやじろべえ状態となっていた。難民家族が物理的に痛くて辛いのに対して、ポーランド青年は心が痛くて辛そうだった。
100%の悪は存在しない、ということをまざまざと見せつけられる非常に良質なモキュメンタリー作品。

らまんば