ほつれる

劇場公開日:

ほつれる

解説

演劇界で注目を集める演出家・劇作家の加藤拓也が、映画監督デビュー作「わたし達はおとな」に続いてオリジナル脚本で撮りあげた長編第2作。「あのこは貴族」「愛の渦」の門脇麦を主演に迎え、ひとりの女性がある出来事をきっかけに周囲の人々や自分自身と向きあっていく姿を描く。

夫・文則との関係がすっかり冷え切っている綿子は、友人の紹介で知りあった男性・木村と頻繁に会うようになる。ある日、綿子と木村の関係を揺るがす決定的な出来事が起こり、日常の歯車は徐々に狂い出していく。

夫・文則を「すばらしき世界」の田村健太郎、木村を染谷将太、綿子の親友・英梨を黒木華がそれぞれ演じた。

2023年製作/84分/G/日本
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:2023年9月8日

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(C)2023「ほつれる」製作委員会&COMME DES CINEMAS

映画レビュー

4.5見る人によって感想は変わるとおもう

2024年5月10日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

門脇麦さん演じる主人公綿子の心の揺らぎを描いた作品。
冒頭、男を残して家を出て電車に乗ると、そこには別の男。
この物語の根幹となっている。
タイトルの意味は漠然としていて焦点が合わないように感じるのは、それだけいろいろな感想があっていいということなのだろう。
考えてみれば不倫というのは恋愛と似ていて、お互いの想いや目的も千差万別にあるように思う。恋愛に、既婚という条件だけが付随する。
このケースでは、木村は綿子の心の支えだったようだ。
木村がくれた指輪をお互いの右手にはめたのは、お互いの立場を侵害しないという意味だと思う。まるで二人は二人いるようだ。
木村は小学生時代に父と一緒に犬の散歩に出かけ、犬が車にはねられた。救急車を呼べと叫ぶ彼だったが、父は何もせず、犬の首を絞めた。これが子供に与えた影響は大きく、次第に会話がなくなり、結婚式にも出席しないほど亀裂が入った。
この父の話は、綿子が交通事故現場から119番通報しなかったことに似ている。
話を聞きながら夫からの電話が鳴るが、綿子はすぐに電話に出た。このことは綿子自身が父の話を自分事として受け止めていないと思われる。おそらく彼女の頭にあったのは、木村が「オレ犬好きじゃなんだよな」といった言葉と、その理由だけだったと思う。
この綿子の想いと視聴側の視点の差が、この作品の見どころだと思う。共感しなくてもいいのだろう。
綿子は逃げているのか、それともわからないのか?
綿子にとって「二重生活」のような生き方に疑問というものはあまりないように思えるのは、もう考えられないところにまで行ってしまったからなのか? 心の支えである人が交通事故にあってもそれを無視できる心の影の正体は何だろう?
綿子は夫との約束を忘れて、友人と山梨に出かけた。それは木村の墓参りのため。
葬式に出なかったのは「実感がなかった」から。そう言いながらも木村の死というものがじわじわと心の中に広がってゆく。
そしてその要因が自分にあったのではないかと思う。
しかしその一方で、結婚記念日のプレゼントを買い、夫と祝う。
綿子の行動に不信感を抱いた夫は、彼女にマシンガン的な質問と「ちゃんと話し合おう」と何度も言う。
夫は離婚という言葉を持ち出す。離婚以外の選択肢をお互い考えてきたはずだ。もう一度やり直すタイミング。しかし綿子にはそのタイミングなど来ていない。
しかし綿子はうまく話せない。言葉にできない。
夫との同居別室生活。夫は彼女の不満は前妻との息子に原因があると思っている。
前妻が引き取った子供を仕事上の理由で預かることに意義はないとしながらも、そもそも不倫がもとで一緒になった二人だった。
子供のことは離婚条件のひとつだったのだろう。
しかし綿子は言う「フミノリが最初に不倫した」 話し合いなんかでは埋まらないことがあるのだ。
綿子が最後に畳みかけるように夫への不満をぶちまけたことで、とうとう綿子の腹が決まる。それを導いたのは他ならぬ夫だ。
「話し合う」ことですべて解決すると思っていた夫と、その間隙に折り合いを付けながらも夫との関係に悩み続けていた綿子。
同じような悩みを抱えている木村に惹かれていく。しかしそれはかつて夫と不倫関係になったのと同じ構造だということに気づけない。
「不倫から始まったからうまくいった」
夫のこの言葉はどこか正しいように聞こえてくる。少なくとも二人には真実だろう。
この作品に恣意的なものはないと思う。だから感じ方も自由だ。
綿子は荷物をまとめ家を出る。
それは「逃げ」だろうか?
私は病んで鬱になるよりよほどいいように思う。
彼でダメなら引けばいい。
何かに気づくまで、何度も失敗していいと思う。
「自分を責めるな、綿子」

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R41

3.5この映画の優れている点とは

2024年5月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
ネタバレ! クリックして本文を読む
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komagire23

4.0現代受けを逆行するも、真な映画好きを唸らせる

2024年3月23日
iPhoneアプリから投稿

2023年劇場鑑賞54本目 優秀作 70点

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サスペンス西島

3.5不倫がテーマだが濡れ場は一切なし

2024年2月17日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

知的

加藤拓也監督作品脚本作品初鑑賞

妻綿子と夫文則
子供無し
夫婦関係は冷え切っていた
友人英梨の紹介で木村と出会った綿子
男女の関係に
木村は妻帯者
ダブル不倫
ある日2人は列車に乗り不倫旅行
今風のおしゃれなキャンプの帰りにそれぞれの家へ帰るため駅を出て別れたがその矢先に木村は車に轢かれ亡くなった
英梨は告別式に参列したが綿子は顔を出さず
後々綿子は英梨が運転する車で木村家の墓がある山梨に日帰り旅行
そこで2人は木村の父と会う
木村まだ墓に納骨されておらず
その日は文則と引っ越し先の家を観に行く日で綿子はそれをすっかり忘れていた
文則から電話がかかってきた
英梨や木村の父も電話に出る羽目に

不倫映画だが濡れ場は一切無し
コメディー要素もない
90分未満の短めの映画とはいえそれで「もたせている」たいしたものだ
出来が良い韓国映画を観てるよう
加藤拓也氏がそれだけ有能なんだろう
たぶん

綿子が未亡人に会い軽く説教されるシーンが印象的
こちらからはそのシーンは背中越しで綿子の顔しか見えない
わりと好きな構図

文則には前妻の間に息子がいる
息子と会う口実で文則は前妻と浮気をしていた
綿子も文則も不倫をきっかけにした結婚だった
文則の前妻や息子や息子を世話している文則の母は登場しない
少々とっつきにくい設定

木村の父は息子をはじめナオキと呼んだ
彼の下の名前がナオキとわかるのはこのシーン
綿子も英梨も木村くんと呼び下の名前で呼ぶことは一度もなかった
しかし2人に息子のついて語るとき父なのに息子のことを「彼」と呼んだ
飼い犬の事故をきっかけに中学の途中からずっと精神的に疎遠になったとはいえ
おそらく血のつながりがない親子関係なのかもしれない

話は淡々と進む
だけどなぜか欠伸は出ない
ラスト10分くらいで夫婦喧嘩
浮気相手の木村が既に故人だということを信じない夫文則
綿子が怒りを爆発させるクライマックス

別れることを決心し家を出る綿子

意外にありそうでなかなかない画期的に思える無音のエンドロール
もし映画館で観たら機械の故障を疑ったかもしれない

公開当時地元で上映されたのはフォーラム仙台のみ
通常イオンシネマで上映されるようなタイプの映画ではない
濡れ場がないことで人間としての高い知性すら感じた
自分がもう少しレベルが高ければもっと高い評価ができたのだが迷った挙句結局星3.5
しょせん自分は野暮天だから

自分はレビューで不倫がいかに駄目なのか力説するほど良心的な人間ではない
子供の頃からどちらかといえば模範的ではなかった
ヤフコメ民の多数派と共感したことなどまずほとんど無い
もちろん奨励はしないが叩く気にもなれない
だけどこれって赤の他人だしそもそもこれってフィクションでお芝居じゃないか
映画だよ
出てるのは役者さん
そこまで熱くなれない
まあだいたいいつものことでストーリーそのものにあまりのめり込まず自分に置き換えるという作業をいっさいやらないからかもしれない
本を読むのは好きだが本の内容について登場人物の心情などについて答えなければならないテストは嫌いだった
これを観て怒りを露わにするような人たちに対してどう思うかといえば全く理解できないし共感する気にもなれなかった
そういう人たちと視点が違うんだろう

あるベテラン女優が園児たちの前でディズニーにアレンジされたやつでない本来の『人魚姫』を演じた話を思い出した
王子様をナイフで刺そうとする直前の場面で園児から「殺せ!」とか「殺さないで!」という声が出たという
もし自分がその園児たちの1人ならおそらくそのどちらでもない反応を示したことだろう

濡れ場がない不倫映画はありだけどハッピーエンドの人魚姫なんてやっぱりありえないわ

配役
文則の妻の綿子に門脇麦
綿子の夫の文則に田村健太郎
綿子の浮気相手の木村ナオキに染谷将太
綿子の友人の英梨に黒木華
木村の父の哲也に古舘寛治
木村の妻の依子に安藤聖
道の駅店員の中田に佐藤ケイ
旅館の受付の原田に金子岳憲
靴屋店員の笹井に秋元龍太朗
救急センターの声に安川まり

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野川新栄
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