劇場公開日 2024年5月10日

「「猿vs人間」の逆転を普遍的に描いた《文明批評的傑作》」猿の惑星 キングダム 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5「猿vs人間」の逆転を普遍的に描いた《文明批評的傑作》

2024年5月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

上質な映画。とても良かったです。
「猿の惑星:聖戦記」で死んだリーダー・シーザーの火葬から始まり、
300年後に遡ります。
衝撃的なラストと盛んに煽っていますが、
1968年の「猿の惑星」を超える衝撃はもはや無理ではないでしょうか?
ラストは西暦何年?
途端にSFが前々前世的に変わり
時代が後退したのか進行したのか分からない意味での衝撃はありました。
そして、
映画のテーマが「クワイエット・プレイス」の、
【音を立ててはいけない】設定と、
【言葉も考えることも奪われた人間】・・・
「猿の惑星」のラストとも近いシーンがみられ、
微妙にクロスオーバーしてる気がするのは、
私だけ・・・でしょうか!

少女のノヴァはやはりずる賢い人間の一味でした。
「野生のエルザ」ではなかったですね。

「猿の惑星」第一作は1968年。
知的で二足歩行に洋服を着た猿は、言葉を話します。
その惑星に不時着した宇宙飛行士のチャールストン・ヘストンは、
捕らえられて、小突き回され裁判にかけられる。
そこには白人女性が1人いて、その女の名前はノヴァで、
ノヴァは話せない人間だった。
(ノヴァは「猿の惑星」のシンボル的名前でシーザー同様に継承されている)
ノヴァを白い馬の後ろに乗せて新天地を求めて
チャールストン・ヘストンがたどり着いた場所。
そこには横に倒れて朽ちた「自由の女神」の上半身が!!
そこは【地球】だったのです、
というラスト!!

第一作から引き継がれているのは、
「猿と人間の立場の逆転」
新薬で変異した知能の高い、話せる、文字も読める、教養もある・・・
猿たちのリプート3作品。
「猿の惑星:創世記:新世紀:聖戦記」
この3作品はかなり難しくて頭が痛くなりました。
今作はその300年後の設定。
猿の王国=キングダムの王様・プロキシマム・シーザー。
海辺にテントをたくさん張った万博のパピリオンみたいな王国を築いて、
独裁者として君臨している。
カリスマ性があり、
「ワンダフル・デー」と演説する姿は某元大統領を彷彿させる。
そんなにむやみやたら殺さたない。
残虐性はほどほど。
この映画の主役はイーグル族の若きリーダー・ノア(オーウェン・ティーグ)
心優しきノアは瞳だけで感情を表現する。
時に涙ぐみ、悔しさに歯噛みする。
親想いで仲間思い。
父親の族長から「絆の日」に後継者として指名されるはずだった。
所がキングダムの王様・プロキシマム・シーザーの軍団が、
《鳥の巣状》に空へと築かれた木々の山々を根城とするイーグル族
を急襲する。
その村を焼き払い、ノアの父親の首長は殺されて、兄弟姉妹・
恋人まで連れ去られる。
運動能力と跳躍力に優れたノアは、1人だけ逃げ伸びて長老の
オラウータンのラカから、昔、昔、存在した人間の科学者に愛されて育ち
野生に戻り猿たちのリーダーとなった《初代シーザー》の話を聞く。
初代シーザーは人間と猿が、【共存共栄】出来るの信じるリーダーだった。
そんな時、長老とノアは人間の少女ノヴァと知り合い
行動を共にする。
人間族が退化して話せない、読めない、原始人化した中で、
猿ウイルスに侵されなかった生き残りのメイ
(フレイヤ・アーラン)
彼女は高い知能と【ある秘密】を握っていた。
メイは本能的にノアを信頼してラカと仲間になります。
この映画「キングダム」では、人間はネアンデルタールの原始人です。

猿の長プロキシマス・シーザーは高度の文明を持つ
「キングダム」を海辺に築いている。
しかしその奥の方にコンクリートで聳え立つ【箱】があるのです。
それこそ退化して死に絶えた人間の置き土産。
シーザーが家来を使って力任せに引っ張ろうと、爆破しよとしても
びくともしない。
しかしノヴァ(メイ)はそこの場所の秘密を知っています。
ノヴァの一言、
「本が見つかれば、」
「全てを元に戻せる」
意味深ですが、ここだけネタバレせずには伏せておきます。

私が通うTOHOシネマズすすきのは、Dolby cinemaでの上映でした。
音響そして精緻な映像美に没入間は半端ないです。
集中できます。
涙ぐむノア。感情豊かで優しい真のリーダー。
イーグル族の名は鷹(イーグル)から来てて鷹を育てて、海や川から鷹は魚を
捕獲してきます。
それを干したりして食糧にしているし、鷹のリーダーのイーグル・サンは
ノアのお父さんの守り神。
ラストでイーグルたちが、とてつも無い大きな働きをするのも見事でした。
「猿の惑星」
人気シリーズで10作品目。
私は一作目を復習してリプートの3作品は見てますが、
今回「猿の惑星:聖戦記」を復習しました。
モーションキャプチャーのキャストは目と顔の表情で全てを表現。
猿の動きで表現する人気シリーズです。
ラストまで観てジーンと胸が熱くなり、高揚した満足感に包まれました。
ちょっとだけ、芸術作品に浸った気分になる映画。

猿は猿のテリトリーを守り。
人間は人間のテリトリーを守り、
決して侵害せずにいれば、
【共存共栄】は成り立っと思いました。
そして、
続編も見たいですね、
衝撃のラストシーンのつづきを!!

「猿の惑星」シリーズが56年も続いていることは
今も新しいテーマ・・・
考え方、民族、肌の色の違う人間そして、【動物】
も含めて、共生出来るのか・・・
それを追求しているのが胸を打つのかもしれません。

琥珀糖
かばこさんのコメント
2024年5月16日

再度のコメント、すみません。
第一作のラストは衝撃的でした。(テレビで観たのですが。。)
「ノヴァ」は継承されている名前でしたか。それなら、本作のノヴァがオリジナルの可能性がありますね。話せない白人女性に継承されているので、本作のノヴァはこの後「色白で可憐だが知性がない」存在の始祖になってしまうような何かが起きるのか!?とか、想像が膨らみました。続編、ハードル高いですね。

かばこ
かばこさんのコメント
2024年5月16日

「少女のノヴァはやはりずる賢い人間の一味でした。」
そうなんですよね、弱々しく保護本能を掻き立てて実際に保護してもらいながら実は、なしたたかさ。
猿の方に感情移入してしまいました

かばこ
ratienさんのコメント
2024年5月13日

「聖戦紀」への共感、コメントありがとうございました。

自分も「キングダム」見てきました。
日曜日の昼間でしたが、そんなに人、入ってなかったです。年配の方が多かったようですが、やはり、第一作の衝撃を受けた方達かな。

リブート三部作については、単純に次のように思ってます。
【ネタバレになりますので、見ていない人は要注意】

「創世記」知性を持った猿(シーザー)が現れ、リーダーとして立ち上がる。人類はウイルスにより滅亡の危機を迎える。
「新世紀」独自の文明を築いた猿と絶滅寸前の人類が共存と対立の狭間でくすぶっていた。異種を拒む(怖れる)一部の者の策略によって、引き戻すことのできない全面戦争へと発展してしまう。
「聖戦紀」全面戦争の中、大佐に妻子を殺されたシーザーは、新たな楽園へ向かう仲間達と別れ、復讐の旅に出るが、仲間共々、捕らわれてしまう。大佐の元で苦渋を強いられるシーザー達だったが、大佐もまた人間の軍隊から追われる身であった。(言葉を失うウイルスに感染?)人間どおしの争いの中、脱走した猿たちは新たな楽園を求め旅立っていく。
楽園に辿り着いた仲間達を見届けたシーザーは・・・

こんな感じでどうでしょうか?

ratien
seiyoさんのコメント
2024年5月12日

コメントありがとうございます。

ラストはリプート3部作のどれかのラストと激似にしていたような…

思い出せないのってモヤモヤしますよね

ある日、フッと思い出すパターンかも😁

seiyo
seiyoさんのコメント
2024年5月12日

こんばんは~。

ラストの衝撃は越えられないですね。

seiyo
LaLaさんのコメント
2024年5月11日

琥珀糖さん
共感返信コメントを
ありがとうございました(^^)

ノアの住む山岳地帯
プロキシマム・シーザーの
海辺。。。確かに絶景でした。
スクリーンで観ると 迫力ありますね。
人間たちの 哀れというか
そういう姿が悲しかったです。
でも ラストが え~って(^▽^;)
でも
オリジナルを超えることはできないですよね。
琥珀糖さんの言う通り
オリジナルを最初に観たときの
衝撃が凄かったと思います。
でも、私は テレビ放送で
父と一緒に観た想い出作品でした。
幼少だったので
父の解説付きで(笑)
2度目もテレビで
その時は よく理解できましたから。
(^^ゞ 自由の女神って・・と ショックでした。

LaLa
LaLaさんのコメント
2024年5月11日

琥珀糖さん
こんにちは(^^)/
いつも、素晴らしいレビューを
お届けくださり ありがとうございます。
リブート2作品を見逃していて(^^ゞ
教えてくださり嬉しいです。

そう、オリジナルを超えることは無理だと
私も強く思います。
チャールトン・ヘストンの
あのラストのシーンは永遠に不滅です。
なるほど、あの女性の名前はノヴァでしたね。

>キングダムの王様・プロキシマム・シーザー
どんなに怖いのかと思ったら
人間社会に興味があって
進化しようという思いが感じられたり
ノアとの闘いは凄かったですが
それぞれの言い分がありましたね。
ノアの優しさも瞳に現れて
あの表情が印象的でした。

やはり大きなスクリーンで
迫力ある場面を堪能するのが一番ですね。

>猿は猿のテリトリーを守り。
人間は人間のテリトリーを守り、
決して侵害せずにいれば、
【共存共栄】は成り立っと思いました。

同感です(´▽`)

LaLa
ピッポさんのコメント
2024年5月11日

琥珀糖さん
フォロー並びにコメントありがとうございます。
おっしゃる通り、私も1968年の「猿の惑星」を超える衝撃は無理だろうなと思いつつ、一縷の望みをもち鑑賞しましたが結果はご存じのとおりです。
続編でどのようにお話を紡いでいくのか、数年後を楽しみにしております。
よろしくお願い致します。

ピッポ