劇場公開日 2008年9月6日

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イントゥ・ザ・ワイルド : インタビュー

2008年9月3日更新

ミスティック・リバー」でアカデミー賞主演男優賞を受賞し、現代アメリカ映画界を代表する存在となったショーン・ペンが、監督として約10年の歳月をかけて映画化に挑んだ「イントゥ・ザ・ワイルド」。91年の「インディアン・ランナー」での監督デビュー以来、「クロッシング・ガード」「プレッジ」と常に骨太な作品を世に送り出してきた彼に本作製作の経緯や、本作を語る上で外せない旅、孤独、人生などについて聞いてみた。(文・構成:編集部)

ショーン・ペン監督インタビュー
「痛みを感じることは嫌だが、何も感じないよりは痛みの方を選ぶ」

いままでのショーン・ペン監督作同様、プリミティブな問いが観客に突きつけられる
いままでのショーン・ペン監督作同様、プリミティブな問いが観客に突きつけられる

――この映画を撮ることになったきっかけは何でしたか?

「12~3年前、本屋に立ち寄ったとき、表紙にバスの絵が描かれたジョン・クラカワーの著書が目にとまったんだ。その絵には凝視せずにはいられない何かがあったんだ。その本を読み進むうちに、私の中に何か大きな着想のようなものが生まれた。だが、この時点では、まだ準備が整っていなかったので、一旦プロジェクトは中止になった。だから、その10年後に再度製作の話が持ち上がったとき、とても嬉しくて興奮したよ。このストーリーを映画化できないはずはないと信じていたからね。もちろん、私が監督を務めるかどうかは分からなかったが、絶対に映画化すべきだとは思っていたよ」

――素晴らしい撮影でしたが、ロケ撮影はどんな雰囲気で行われたのですか?

「ロケは非常にうまく運び、そのこと自体宿命的であると感じたね。映画キャリアの中で初めて、私が理想とするライフスタイルが、私の実際のライフスタイルや仕事と手を結んだんだ。自分の子どもの笑顔を見ること以外に、私にとってロケーションでの撮影ほど楽しいことはないよ。撮影隊のロケ旅行自体が映画の主人公とその物語を発見するための旅であり、我々はその間ずっと楽しい時間を過ごすことが出来たんだ」

――大自然でのロケですから、苦労が多かったのではないしょうか?

「素晴らしいクルーに恵まれたね。私は彼らに対して多くを要求したが、どんな困難な要求をしても、彼らは変わらず映画のストーリーを愛していた。ストーリーが私たちを牽引してくれたんだ。そして私たちは、常に大自然を肌で感じ、それに癒されたんだ」

――映画化にあたり、クリス・マッカンドレスの実際の家族の許可が重要な点ではなかったですか?

「もちろん。ひとたび彼らが我々を信頼してくれた後は、映画化に対してとても積極的になってくれた。映画化するかどうかは家族の判断にかかっていたからね。多くの時間をかけて話し合いをしたが、とても協力的なファミリーだったよ」

ショーン・ペンはエミール・ハーシュを絶賛
ショーン・ペンはエミール・ハーシュを絶賛

――クリスのご家族は完成した映画を見ましたか?

「とても満足していたよ」

――主人公のクリス役にエミール・ハーシュを選んだ理由は?

「『ロード・オブ・ドッグタウン』で主演した彼の演技が良かった。しかし決定的な要素は、彼の全身がハートだから。エミールは、ほかの俳優にはない深い優しさに裏づけられた愛を携えた俳優だよ。彼がこの撮影で経験したような過酷な状況を経験したことのある役者を、私は他に知らない。彼は撮影中、どんな辛い状況に置かれても逃げなかった。21歳になったばかりの若者がだよ。エミールは素晴らしく集中力のある俳優だよ」

――クリスの足跡をたどり、感じたことは?

「彼がアラスカで独りで過ごした113日間については深く考えさせられたね。強靭な意志を持ち合わせた人間でなければ、あんなことは出来ないだろう」

――そんな過酷な場所で長期間独りで暮らしたからこそ、クリスは最終的に人との触れあいの重要性に気づいたのでしょうか?

「クリスの孤独な旅はこの映画の最も重要なポイントの1つ。独りきりで過ごす孤独な時間は、社会や家族に貢献する気持ちを生み出し、目的に到達するために必要なステップだと思うが、孤独に過ごすこと自体が人生の答えにはなりえないと思う」

執念で映画化にこぎ着けたショーン・ペンと キャスリーン・キーナー(右)
執念で映画化にこぎ着けたショーン・ペンと キャスリーン・キーナー(右)

――あなたとクリスの共通点はありますか?

「2人とも好奇心旺盛で自然の荒野が大好きなタイプの人間だね」

――クリスのように人間社会とのつながりを一切断つ必要性を感じたことはありますか?

「田舎を車で走り回ったり、ヒッチハイクしたりして何度か実行したことがある。風に身をゆだねて、気の向くままに動くのは楽しいことなんだよ」

――あなたは、ご自身が心の底から信じていることを大切にする人に見えます。

「そうするよう努力している。そして、自分自身の人生を感じ取る力が重要だと考えている。痛みを感じることは嫌だが、何も感じないよりは痛みの方を選ぶ。痛みは人生の一部であり、対処できるものだと思っている。それを乗り越えたとき、喜びが訪れるわけだからね。無感覚になることだけは絶対出来ないよ」

>>エミール・ハーシュ インタビュー

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