そして僕は途方に暮れる

劇場公開日:

解説

三浦大輔の作・演出、「Kis-My-Ft2」の藤ヶ谷太輔主演で2018年春にシアターコクーンで上演された舞台「そして僕は途方に暮れる」を、舞台に続き三浦と藤ヶ谷のタッグで映画化。

自堕落な生活を送るフリーターの菅原裕一には、長年同棲している鈴木里美という恋人がいるが、あることをきっかけに彼女を裏切ってしまい、里美と話し合うこともなく家を飛び出してしまう。親友の今井伸二、バイト先の先輩・田村修、学生時代の後輩・加藤、姉・香、母・智子のもとを渡り歩く裕一は、バツが悪くなるとその場を離れ、あらゆる人間関係から逃げ続けていく。そんな中、裕一が出会ったのは、偶然に家族から逃げていった父・浩二だった。父との出会いにより、裕一の中で何かが少しずつ変わり始めていくが……。

三浦がメガホンを取り、藤ヶ谷が裕一役で主演を務めた。

2022年製作/122分/G/日本
配給:ハピネットファントム・スタジオ
劇場公開日:2023年1月13日

スタッフ・キャスト

監督
原作
三浦大輔
脚本
三浦大輔
製作
小西啓介
藤島ジュリーK.
渡辺和則
荒木宏幸
中野哲夫
企画
小西啓介
プロデュース
小西啓介
プロデューサー
政岡保宏
澤岳司
キャスティングディレクター
杉野剛
音楽プロデューサー
和田亨
アソシエイトプロデューサー
原田耕治
ラインプロデューサー
尾形龍一
撮影
春木康輔
長瀬拓
照明
原由巳
録音
加唐学
整音
加藤大和
美術
野々垣聡
スタイリスト
小林身和子
ヘアメイク
内城千栄子
編集
堀善介
音楽
内橋和久
エンディング曲
大澤誉志幸
VFXスーパーバイザー
村上優悦
サウンドエフェクト
小島彩
助監督
高土浩二
制作担当
土田守洋
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映画レビュー

3.0「父親力」MAXな一本

2024年5月2日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

<映画のことば>
父親として、お前に言っておく。
逃げろ。逃げろ。逃げろ。逃げ続けろ。
そうして、どうしようもなく怖くなったら、映画の主人公にでもなったつもりで、こう思うんだ。
「面白くなってきやがったぜ。」
これで、すべて解決する。

<映画のことば>
やっぱり、お前は俺と違うな。
全然、面白くならなかったじゃねぇかよ。

人間、生きていくためには、時には「逃げる」ことも必要になることがあるのかも知れませんけれども。
破綻するたびに、それぞれの人間関係から逃げて、逃げて、逃げまくってきた裕一が、初めて(ようやく?)自分と向き合い、(これだけの人間関係の破綻を経験して来たのに)「何も変わっていないんですよ、俺。」と気がついたことが、裕一の最大の変化だったのだろうと思います。評論子は。

そこまで来られれば、大丈夫でしょう。
現に、その後の裕一は「最大の危機」も、ちゃんと乗り越えることが出来ていた訳ですから。

そして、裕一をそこまで「押し戻した」のは、何と言っても父親の影響力を置いて、他にありません。
女子力ならぬ、「父親力」MAXな一本というべきでしょう。

佳作だったと思います。評論子は。

(追記)
たまたま同じ時期に観た別作品『ちひろさん』も、生き様(ざま)ということがテーマの作品でしたけれども。同作中のちひろさんのように「逃げない」「運命に真正面から抗(あらが)う」という生き方も一つとすれば、本作のように「逃げる」ということも、それはそれで一つの生き方なのかも知れないと思います。評論子は。
省みて、二人の子供たちから見て、評論子はどんな父親だったでしょうか。
おそらく、その本心を聞く前に、評論子の柩の蓋が閉じられるとは思うのですけれども。
そんなことにも思いの至った作品になりました。

(追記)
しかし、何ですか、この映画は。
本当はコメディですか?
そういう前段の組立ても、本作の「味わい」を、いっそう深くしていたとも思います。
学生演劇ご出身の方のようですけれども、こういう作風の監督さんなのでしょうか。
だったとしたら、「追っかけ」をするのが楽しみな監督さんに、また新しく出会えたようにも思えて、嬉しい限りです。評論子には。

(追記)
裕一の郷里の「北海道」って、苫小牧市のことだったのてすか。
シネマ・トーラスでのロケがあったのですね。本作では。
「王子総合病院」も、市内では大きな病院のひとつです。
そして、王子製紙の煙突や、苫小牧駅のコンコースも映っていました。
ちなみち、苫小牧市は評論子の地元ではないのですけれども。
それでも、同市内で別の集まりがあって、その機会に月にいっぺんくらいは、ここシネマ・トーラスでも映画を観ていることを、申し添えておきたいと思います。

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talkie

4.0いつのまにか自分の物語に

2024年5月1日
スマートフォンから投稿

何かあったはすぐ逃げる主人公に、なんだこいつって観ていたのにいつのまにか自分の中にある主人公に共感して苦しくなり主人公を応援したくなりました。
鑑賞後にいろいろ考えさせられる映画らしい映画だと感じました。

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のりたま

3.5逃げると疲れる

2024年4月17日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

逃げると疲れる

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いのしし

4.0意外に面白く、普遍的なことが描かれている

2024年4月15日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

結局、最後は大好きな大沢誉志幸さんの曲が流れてきた。
曲から物語を思いついたのか、作品のタイトルを曲と被せたのかわからないが、タイトルはこの作品に似合っていることにしておこう。
物語全体を通して、一つ一つにオチのようにどんでん返しと結末がある。
そしてモチーフとなるのが「映画」という言葉。「ねじ巻き鳥クロニクル」の「シナモン」の型を使い、後輩の助監督がこの作品全体を作っているという構成なのだろう。
父と一緒に映画を見て、父は「ハッピーエンドで意外につまんなかったな」というあたりがこの作品そのものの脚本を主人公のユウイチが書き、映画にしたということだろう。
ゲス男の主人公は誰から見ても共感できないが、そういう人は少なからずいるのかもしれない。
ユウイチのしっちゃかめっちゃかな生き方と父の生き方は似ており、「逃げて逃げて逃げ続けろ」と言いながらも、人生のタイミングを教え、無理やり里美に電話させることがきっかけで、ユウイチが父と一緒に生活していることが皆に知れ渡ることになる。
父の言う「世間とかかわらない生活は囚人と同じだ」という言葉は非常に強い言葉で、ユウイチの感情を揺さぶる。
母が倒れ救急車に運ばれたという里美からの伝言も5日間も放置していたが、慌てて駆け付けようとする自分と「面倒くさい」と言った父を罵倒するほど、実際ユウイチの心は死んでいない。
心配で駆けつけてくれた里美と伸二。にもかかわらず一人で食事しようとするユウイチに、姉がキレた。
ユウイチはようやく謝ることができた。
いま俺変わろうとしているけど、どうしたらいいかわからない。自分の中で何が本当なのかわからない。何かしないといけない…
彼の言葉はよくわからないものの、彼なりに自分と真摯に向き合っていることが伝わってくる。
伸二が話した「ユウイチという人間の中の、ただの失敗」という言葉は、本当にその通りだと思った。
里美の態度も、彼を許している。東京、まだある戻る場所はある…
物語は一旦クライマックスを迎える。父の登場と4人で過ごす年越し。
そば二人、カップそば二人というのも面白い。
すべてハッピーエンドかと思われたが、美里は伸二と付き合っていた。
すべてはユウイチが原因だ。
後輩からの電話「先輩、どうなりましたか? 結末教えてください」
「まだ終わってない。面白くなってきやがった」
後輩に対し父の言葉を遣ってみた。
最後は冒頭のシーンと同じカットで終わる。 しかし表情は全然違う。逃げ隠れする目と退職的に挑戦する目になっている。
この「面白くなってきやがった」という言葉は、人生を変えていくための普遍的な強い言葉だ。
俺は人生に陥っているんじゃない。このピンチを楽しんでいるんだ。
嘘でもいいからこの言葉を遣うことで、必ずピンチをチャンスにできる。
この作品はクソ男で共感できず、結局やってしまったことのツケを支払わされるうえに、ひねくれたクロニクルで表現しているものの、この普遍性を強く描いている。
つまり見るべき点はその1点しかない。

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R41
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