生きる LIVING

劇場公開日:

解説

黒澤明監督の名作映画「生きる」を、ノーベル賞作家カズオ・イシグロの脚本によりイギリスでリメイクしたヒューマンドラマ。

1953年、第2次世界大戦後のロンドン。仕事一筋に生きてきた公務員ウィリアムズは、自分の人生を空虚で無意味なものと感じていた。そんなある日、彼はガンに冒されていることがわかり、医師から余命半年と宣告される。手遅れになる前に充実した人生を手に入れたいと考えたウィリアムズは、仕事を放棄し、海辺のリゾート地で酒を飲んで馬鹿騒ぎするも満たされない。ロンドンへ戻った彼はかつての部下マーガレットと再会し、バイタリティに溢れる彼女と過ごす中で、自分も新しい一歩を踏み出すことを決意する。

「ラブ・アクチュアリー」などの名優ビル・ナイが主演を務め、ドラマ「セックス・エデュケーション」のエイミー・ルー・ウッドがマーガレットを演じる。

2022年製作/103分/G/イギリス
原題:Living
配給:東宝
劇場公開日:2023年3月31日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第80回 ゴールデングローブ賞(2023年)

ノミネート

最優秀主演男優賞(ドラマ) ビル・ナイ
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(C)Number 9 Films Living Limited

映画レビュー

4.0Re-Appreciate the Original

2024年5月7日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

A quaint retelling of the Kurosawa film. It is rather wholesome compared to most other films released today. As a period piece it's a convincing dress up of post-war London. Compared to the original the film, it has more to say about life based on the characters surrounding the lead public works officer. One could hope this studio will try it again with another Kurosawa classic reset in London.

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Dan Knighton

5.0見事なリメイク

2023年4月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

こんなに見事にリメイクできるとは。余命を宣告された男が人生を見つめなおすという物語は、オリジナルの『生きる』をはじめとして大量に存在するが、このように抑制を効かせて静謐なタッチで描けば今なお有効な題材なのかと驚いた。
主演のビル・ナイが本当に素晴らしい。イギリス紳士のあるべき姿(それはもしかしたらすでに現実には失われているかもしれない)を抜群の存在感で演じ切っている。公共事業と福祉が手厚かった頃の「古き良き時代」を築いたのはこういう人だったのかなと思わせる。
人生を悔いなく生きるというのは、誰にとっても切実な問いだ。後悔ないように生きたいと誰だって思うが、それを叶えるには他者との関係、社会との関係、その他多くのことを見つめなおすことから始まる。息子や同僚との個人的な関係を見つめなおし、陳情に耳を傾け社会との関係を見つめなおし、雪ふる公園のブランコから世界を見つめ直す。人と社会と世界との関係を正しく描いた傑作。

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杉本穂高

4.5巧みな脚色。そしてビル・ナイの俳優人生に燦然と輝く見事な名演。

2023年4月26日
PCから投稿

非常に心を打たれる映画だった。オリジナル版と同じ志を持ったストーリーでありつつ、本作独自の、例えば列車通勤の一場面を用いて勤務先での序列や風土をかくも巧みに表現してみせる手腕は見事だ。ウィリアムズ氏は口うるさくもないし、不愉快な人でもない。しかし部下たちは誰もが、そうすることが礼儀であるかのようによそよそしく壁を作る。こうした古い階級社会のしきたりを突き崩し、皆が一丸となって自分以外の誰かのために身を投げ出して事を為そうとする衝動に「生きる」の本質を見た。「ゴンドラの唄」に代わるスコットランド 民謡の響きと、それを掠れ気味に切々と歌い上げるビル・ナイのたたずまい。それでいて部下を従え「さあ、いくぞ」と雨の中を飛び出していく気高さ。カズオイシグロの脚色もさることながら、ケープタウン生まれの監督の演出が冴え渡る。元々のトルストイの要素も相まって、世界が共有しうる力強い普遍性を持った傑作である。

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牛津厚信

5.0カズオ・イシグロ×ビル・ナイによる"そうなる前の人生の教科書"

2023年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

これは多分完璧なリメイク映画だ。黒澤明が1952年に発表した『生きる』を同じ時代である1953年のロンドンに置き換え、末期がんに冒された初老の公務員が残り少ない人生をどう生きたか?そのプロセスを黒澤版が143分の長尺で描いたのに対して、今回のイギリス版は103分で駆け抜ける。でも、見終わると40分を端折った感じがまるでしないのだ。

オリジナルの細部を削ぎ落とし、そこにいかにもイギリス映画らしい洒脱さを書き加えたのはノーベル賞作家のカズオ・イシグロ。黒澤版が1枚のレントゲン写真から物語が始まるのに対して、イシグロ・バージョンは市役所の若い新入職員が先輩たちと乗り合わせる朝の通勤列車に、仏頂面の主人公、Mr.ウィリアムズが乗ってくるところから始まる。そうして、周囲から距離を置いて見られていたMr.ウィリアムズが、人知れず自分の死を察知した時、誰も想像しなかった行動に出ていたことが判明する時、特にこの映画を観た若者たちに対して、人生に限りがあることを強く訴えかけてくるところが新鮮だ。

誰だって若い頃は希望に溢れ、社会に貢献したいと思っているはず。でも、やがて時の経過と共にそのような熱は日々のルーティンと共に消え去り、気がつくと、ただの組織のコマに成り果てている。黒澤明のマスターピースに敬意を表しつつ製作された『生きる LIVING』は、そうなる前に観ておくべき人生の教科書。Mr.ウィリアムズを演じるビル・ナイの端正で押し付けがましくない存在感が、珠玉のテキストに説得力を加筆している。アカデミー賞は逃したけれど、ビル・ナイって凄い!そう感じるファンは多いに違いない。

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清藤秀人
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